女子1万メートルで日本歴代3位の30分45秒21を持つ不破聖衣来(19=拓大)が、145日ぶりの復帰レースで優勝した。4月17日の日本学生個人選手権以来のレースで、32分55秒31で同種目初V。右アキレス腱(けん)痛、股関節痛に見舞われて、7月の世界選手権オレゴン大会は挑戦を断念。無念を胸にしまい、オレゴンの決勝を現地観戦。再び世界を目指して走りだした。

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不破が、スパートした。6位で通過した7200メートルからぐんぐん加速してトップに出る。「もともと出るプランはなかったが、勝負したい気持ちがあった」。2位以下を引き離し、独走。ゴール直後に、感極まった表情で目を光らせた。「汗と涙と両方です。こういう大会はすごく楽しいなと感じた」とふわり笑った。

145日ぶりのレース。貧血の症状があり、直近1カ月はジョグしかできなかった。出場の最終決定も3日前。目的は1キロ3分20秒ペースで完走することだった。だがランナーの本能が優勝に向かわせた。五十嵐監督は「練習を見ていたら、信じられない。天才的な部分」と走りに驚いた。

東京五輪後に現れたニューヒロイン。だがけがで7月の世界切符は逃した。

7月16日、米オレゴン州ユージン。3泊5日の強行軍で現地に行った。女子1万メートル決勝を観戦。世界トップの猛スパート、12位に入った広中の懸命な姿を目に焼き付けた。選手たちが次々とゴールに入り歓喜に沸くスタンドで隣に座る五十嵐監督に、最初に聞いた。

「この人たちに勝つためにはどうすればいいですか?」

夢に向かって、再起の第1歩として1万メートルインカレ初V。11日の5000メートルは出場しない方針で、次の目標に向かう。「世界と戦うには日本記録(30分20秒44、新谷仁美)はひとつの通過点。そこは目指したい」。しっかり体をつくって臨むタイムアタックは12月、この日と同じ京都で予定している。【益田一弘】

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