全国に門戸が開放された第100回記念大会にあって、東海地区から参戦した皇学館大(三重)は11時間10分00秒(チーム上位10選手の合計タイム)の35位だった。最終通過した13位の山梨学院大の記録は10時間39分47秒とあって、30分23秒の大差が付いた。

今回チャレンジした寺田夏生監督は「やっぱり関東は強かったなぁと思います。ホームページに載っている平均タイムから違うし、まずは1人でも関東に対抗できる選手を育てないといけない」とあらためて壁の高さを痛感した。

この寺田監督は、国学院大時代の11年に箱根駅伝に出場し「寺田交差点」なる伝説を残したランナーだ。

当時ルーキーとして最終10区を走り、8位集団でデッドヒート。4人が並ぶ形で東京・大手町へ。そして最後の直線勝負に向かう場面で、前を走る中継車につられて交差点を直進するところを右折。いったん11位まで後退したが、そこから残り100メートルで猛スパート。シード圏ギリギリの10位に飛び込み「あぶねー」と叫んだ。

このコミカルで人間味あふれる行動は駅伝ファンのハートをわしづかみにし、右折した交差点は「寺田交差点」と呼ばれ、箱根駅伝のたびに紹介されている。

「僕自身もあの経験があって、いろんな方から応援してもらっている。本当にいいですね、箱根駅伝って」と笑った。

人の思いをつなぐのが駅伝の醍醐味(だいごみ)だ。そんな人間ドラマをよく知る指揮官とあって、さらにこう続けた。

「僕もあそこで道を間違えて応援されるようになって。そこから実力で応援されるようになりたいなぁ~と思って頑張ることができましたし、そこから4年生になってキャプテンとかも任されるようになって、僕が1年生の時の4年生のようなチームを目指したんですけど、なかなか思うようにいかなくて失敗の連続だったんですけど。でも、どちらかというと、成功よりも失敗した時の考えや出来事の方が今、指導者になって生きています。だから学生たちにもいろんな経験を積んでもらいたいと思っています」

普段から学生たちには日々の積み重ねの大事さを伝えている。陸上と人生は同じと考える。自らの経験を踏まえ、自ら考えて行動できる自主性をうながしているという。

だからこそ、今回の35位は次に生きる経験にほかならない。「やっぱり箱根はいいなぁ。予選でこの規模ですから。今回だけでなく、全国化してほしいです」。箱根を通じて自らの人生を切り拓いた男は、すがすがしく笑っていた。

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