来夏のパリ五輪予選を兼ねたバスケットボール男子W杯(沖縄ほか)で、日本(世界ランキング36位)が出場権を懸けた大一番を迎える。

順位決定リーグO組最終戦で2日にカボベルデ(同64位)と対戦。現在通算成績2勝2敗で、勝てばパリ五輪出場が決まる。同リーグ初戦でチームを大逆転勝利に導いた最年長の比江島慎(33=B1宇都宮)は1日、沖縄市内で調整し、あらためて勝利を誓った。日本は自力で出場権をつかめば、76年モントリオール五輪以来48年ぶりとなる。

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勝てば48年ぶりとなる自力での五輪切符確定。そんな運命の日を翌日に控えても、比江島はいつものようにひょうひょうとしていた。「もちろん疲労感はあるけれど残り1試合。しっかり休んで準備したい」。

カボベルデはW杯初出場。NBAでプレー経験がある221センチのエディ・タバレスを擁し、平均身長は日本より6センチも高い。相手の印象については「身体能力が高い」と警戒しつつ「粗い分、付け入る隙はある。速い展開に持っていきたい」と狙いを語った。

報道陣に公開された時間帯のシュート練習では、外角からのシュートを沈め、比江島の好調ぶりがうかがえた。前日8月31日のベネズエラ戦は、試合終了まで残り8分12秒で、15点差をつけられる大ピンチ。救ったのはベテランだった。第4クオーターだけで17得点の神懸かり的な活躍を見せ、日本を大逆転勝利に導いた。「それが自分の役割。逆に、その仕事ができていないときに負けている印象。そうしないと勝てない」。淡々とした口ぶりに、覚悟がにじんだ。

チーム最年長の33歳。鋭いドライブを武器に、長年代表をけん引してきたが、最近はアピール不足で立場が危うくなっていた。「明日、切られるかもしれないという精神で臨んでいる」。危機感を募らせてメンバー入りした大舞台で、これ以上ない輝きを放った。

チームはパリ五輪の切符をはっきり射程に捉えた。試合後には「W杯、五輪での経験が欲しくて、トムさん(ホーバス監督)も選んでくれたと思う。今までの悔しい経験が絶対今日の試合に生きた」と話した。

ベネズエラ戦で比江島は米国代表のブリッジズ(ネッツ)のように指を3本広げるポーズを取った。その様子をNBAの公式X(旧ツイッター)が投稿すると、ブリッジズはそれを引用する形で「これは素晴らしい」と反応。本家からのお墨付きを得た。

この日の練習の最後に組まれた円陣で、ホーバス監督は選手たちに声をかけた。報道陣からどんな言葉だったのか尋ねられ「まだ仕事は終わっていないぞと言われた」とぼそぼそと話した。隣にいたチーム広報は思わず「声、小さっ」と苦笑い。大一番を前にしても、比江島はマイペースを崩さない。そして本番では、いつものようにかっこよく決めるはずだ。【奥岡幹浩】

○…各組2試合を行う順位決定リーグで、1試合目が終わった時点で日本はO組首位に立つ。1次リーグの成績が持ち越され、日本はアジア勢で唯一2勝(2敗)を挙げてアジア勢首位をキープ。最終戦のカーボベルデ戦に勝てばO組首位、アジア勢でも首位となり、パリ五輪出場切符が文句なしで決定する。

日本が負けた場合は同組のもう1つの試合、フィンランド-ベネズエラでベネズエラが勝つと日本はO組2位となり、他組で唯一グループ首位通過の可能性があるレバノンの結果次第となる。

日本が負けてフィンランドが勝った場合は、日本が16点差以下で負ければ日本はO組2位通過。17点以上の差で負けると同組3組に転落し、別組で2位以上の可能性があるレバノン、中国、ヨルダンに上回られる可能性がある。

W杯でパリ五輪出場権を獲得するには、アジア勢首位通過が絶対条件となる。