今週は玉川大の体育会ダンスドリルチーム「JULIAS(ジュリアス)」を紹介する。数々の実績に輝く大学チアダンス界の名門で、昨年10月にポーランドで行われた第1回世界大学チアリーディング選手権のチームポン部門で優勝を飾った。チームを大学世界一に導いたのは選手、コーチの情熱と、ある“秘密兵器”だった。

昨年の世界大学選手権に日本代表として出場し、金メダルを獲得した玉川大ジュリアス
昨年の世界大学選手権に日本代表として出場し、金メダルを獲得した玉川大ジュリアス

大学チア界に名前をとどろかす「ジュリアス」だが、練習環境は決して恵まれているとはいえない。体育館の1つのフロアをバレーボール部、バスケットボール部などと共有し、62人の部員が練習に励んでいる。昨年までは、ダンス練習の必需品ともいえる鏡もなかったという。

そこで、選手たちが考えたのがスマホの活用だ。中島茜音(あかね)キャプテン(4年)は「自分の演技を(鏡で)見ることができないので、お互いに動画を撮り合い、それを見て練習の参考にしています」と言う。

練習で使い慣れているそのスマホが、実は世界大学選手権優勝の大きな力となった。「ジュリアス」は選考会を勝ち抜いて、日本代表となった。本番1カ月前の昨年9月、OGでもある中島乃里枝コーチは選手たちに、練習の動画を撮影して毎日送るように依頼した。「大会が迫ってもチームはまだ未熟な状態で、何とかしてこの子たちを本気にさせたかった。それには私自身が本気を見せなきゃいけないと思ったんです」。

他に仕事を持っている中島コーチは毎日練習に行けるわけではなかった。スマホで送られた動画で1人1人の動きを確認。A4の紙に指示を手書きし、それをスマホのカメラで撮影して送り返した。選手たちはそれを見て、コーチ不在時は自分たちで練習を重ねた。

「メールを打つだけでは気持ちが伝わらないと思い、あえて紙に文字を書いたんです。1人1人に指示を書いて、多いときで7ページありました。アナログな方法ですが、私が求めていたことが伝わったのかなと思います」と中島コーチは笑う。

「ジュリアス」は世界大学選手権で第1日、第2日とも完璧な演技を披露し、圧倒的な差で優勝を果たした。中島キャプテンは「中学3年からチアを始めて、一番心に残る瞬間でした。何より、力を込めて指導してくれたコーチに恩返しできたことがうれしかった」と振り返る。

今年の目標は全日本チアダンス選手権でグランプリを獲得すること。中島コーチは「他のチームが追いかけても、常に追いつけない存在であるようなチームを目指していきたい」と話した。

◆玉川大体育会ダンスドリルチーム「JULIAS(ジュリアス)」1992年チーム結成。16、17年に全米学生選手権を連覇するなど、世界を舞台に数々の実績を持つ。現在の部員は62人。新入部員の8割程度がチア経験者で、ジュリアスにあこがれて玉川大を目指した部員も多い。週に5回、東京都町田市の同大体育館で約3時間の練習を行っている。首都大学野球の応援や地域のイベントで演技を披露することもある。