歌舞伎俳優の市川染五郎あらため10代目松本幸四郎(44)は昨年5月、プロスケーターの高橋大輔氏、荒川静香氏らと舞台で共演した。実際にスケート靴を履いて演技したものにしか分からない共通点やスケーターの印象などを語った。

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 松本幸四郎は「氷艶2017」公演のため、スケートを猛特訓した。

 「深夜の1時、2時に寒いスケートリンクに歌舞伎俳優たちが集まって、汗だくになって練習しました。この年齢になって、まったくできないことを一から身に付ける経験をするのは、本当に新鮮でした。歌舞伎の仲間たちの間で、アイスホッケー部を作ろうという話もあるんです」

 高橋大輔氏、荒川静香氏らと共演して、彼らが持つスター性が強い印象として残ったという。

 「フィギュア界は、世界的なすごいプロスケーターがいる時代になって、これからフィギュアスケーターの時代ですよね。楽しみでしようがない。フィギュアの大会は、採点競技ならではの緊張感があって、技術や表現で選手たちが自身の極限の勝負を見せるという醍醐味(だいごみ)がある。でも、エキシビションになると、開放感があって、人を魅了する、高度なエンターテインメントであると感じます。どちらも魅力的ですね」

 スケーターのプロとしての姿勢にも共感した。

 「お互いにやったことのないことだらけだった。でも、新しく作ることへのこだわりがあって、自分が持っているものを出し切ってくれた。みんなストイックだったけれど、本当に楽しい稽古だった。終わってからも、公演の放送を見る機会があって、20人ぐらいが集まってくれたし、関係は今も続いています。今回のことが何かの始まりになってくれればと思います」

 2月9日から平昌(ピョンチャン)五輪が始まる。幸四郎は代表選手の活躍に期待を寄せる。

 「ジャパネスクにこだわって勝負してほしい。僕も米国ラスベガスで新作歌舞伎を上演した経験があって、歌舞伎を通して、世界にジャパネスクなものを見てほしいという思いがある。世界の人たちが見る五輪でフィギュアを通して、ジャパネスクを知らしめてほしいと思います」【林尚之】