「二刀流の女王」は、北京でも圧倒的に強かった。

スノーボード女子のパラレル大回転、連覇したのがチェコのエステル・レデツカだ。2位に2秒以上の大差をつけて予選トップ通過。決勝トーナメントでも決勝まで4レースを圧勝した。対戦相手が追いつけず、無理をして途中棄権。誰一人ゴールできなかった。

「すごく幸せ」と笑顔をみせたレデツカは3日後、スキー・アルペンのスーパー大回転で連覇に挑む。前回大会は、五輪史上初めてスノボとスキーの両競技で金メダルを獲得。圧倒的な力は今回も健在だった。

スノボとスキー、同じ雪上競技だが、まったく異なる。両足が1つの板に固定されるスノボとそれぞれ板を履くスキー、ストックの有無…。滑り方も違えば、体の動かし方やエッジの使い方も違う。「両競技で五輪に出るだけでも信じられない」と選手たちは話す。

もともとスノーボードのトップ選手だったが、遊びで出たスキー大会で好成績を残して「二刀流」になった。「まったく違う競技だからこそ、どちらかを辞めるのは無理」。当たり前のように「二刀流」を貫き、結果を残している。

今大会は、日本選手でもたびたび「二刀流」の言葉が出てくる。モーグル男子の原大智は競輪選手でありながら五輪に出場。東京五輪スケートボードの出場した平野歩夢は9日からの男子ハーフパイプで金メダルを目指す。モーグル銅メダルの堀島行真は強化のために体操や飛び込み、フィギュアスケート、パルクールまでやったという。

かつては、脇目も振らずに1つの競技に集中するのがいいとされた。野球の投手は「肩を冷やす水泳は禁止」と言われるなど、他競技をやることの弊害さえ信じられた。「柔道一直線」のように身も心も一直線になることが大切だった。

今は、複数競技に取り組むことの効果が見直されている。「バランスのよい鍛え方ができる」「ケガが防げる」「精神的にも気分転換にもなる」…。圧倒的にプラス面が多い。競技力強化のための支援プランなどを作成するスポーツ庁も、複数競技実施を勧める。

以前なら「中途半端」などと言われた「二刀流」だが、大谷翔平の功績もあって語感もずいぶんと変わった。「どちらか」ではなく「どちらも」、2兎(と)追う者は「1兎も得ず」ではなく「3兎を得る」。そう思えるからこそ、レデツカのアルペンスキー、そして平野歩のスノーボードが楽しみになる。【荻島弘一】

(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

スノーボード女子パラレル大回転 連覇したチェコのエステル・レデツカの滑り(AP)
スノーボード女子パラレル大回転 連覇したチェコのエステル・レデツカの滑り(AP)
スノーボード女子パラレル大回転 連覇し喜ぶチェコのエステル・レデツカ(ロイター)
スノーボード女子パラレル大回転 連覇し喜ぶチェコのエステル・レデツカ(ロイター)
スノーボード女子パラレル大回転 連覇したチェコのエステル・レデツカの滑り(ロイター)
スノーボード女子パラレル大回転 連覇したチェコのエステル・レデツカの滑り(ロイター)