悲しみを乗り越えて開幕戦優勝をつかんだ。昨季年間女王の佐久間朱莉(23=大東建託)が、逃げ切りで通算5勝目を挙げた。2位に4打差の首位から出て、3バーディー、1ボギーの70と2つ伸ばし、通算16アンダー、272。2位の永井花奈に1打差に迫られながらも、慌てずに振り切った。年間(賞金)女王が翌年の開幕戦に勝つのは、03年の不動裕理以来、23年ぶりだった。昨年12月23日に78歳で亡くなった、国内男子ツアーで最多94勝の「ジャンボ」こと尾崎将司さんに、最高の報告を届けた。

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自信が漂っていた。最終18番パー5。外せばプレーオフ突入となる、1・5メートルのパーパットを佐久間は当たり前のように決めた。直後に、かみしめるように右手を力強く握った。大歓声に応えるようにして、拾い上げたボールを手にした右手を掲げた。天国の師匠、尾崎さんからも見やすいように、より高い位置でウイニングボールを示した。表彰式のスピーチで言った。「この優勝をジャンボさんに届けたいと思います」。感謝の思いがあふれた。

スコアこそ1打差だが焦りはなかった。出だしの1番でバーディー。3番では8メートルのパットを沈め、2位永井に6打差をつけた。だがその後は1バーディー、1ボギー。伸ばせずに9番からは10ホール連続でパーを並べた。その間、永井に迫られたが「苦しいと思った場面は正直、なかった」という。何度も初優勝を逃していたころと比べ「前までだったら焦っていた。人のプレーばかり気になっていた。今は自分のプレーだけに集中して『それで負けたらしょうがない』と思える」と成長を自認する。

第2ラウンドで自己ベストの「62」をマークし、23年ぶり大会コース記録に並んだ。第3ラウンドは最大瞬間風速16・5メートルという強風の中でベストスコア69を出した。難コース、難コンディションに動じず、昨季よりも一回り成長した姿を見せた。「ジャンボさんが亡くなって、ご飯もなかなか食べられない日が続いた。でも、そんなことしてる場合じゃないと思った」。中学3年から指導を受ける師匠の恩に報いるのは、悲しむことではない。勝つこと。父浩太郎さんは「ジャンボさんの葬儀に行ってからは吹っ切れた様子だった」と当時の様子を明かした。

年間女王の翌年開幕戦優勝に「不動さんの成績に並べたことはうれしい」と喜んだ。ただ「まだまだ始まったばかりだぞ、って言われるんじゃないかな」と、厳しい師匠の声が聞こえるようだ。だからこそ「5勝はいきたい」と、昨季の年間4勝超えが今季の目標。成長が何よりの恩返しと知っている。【高田文太】

◆佐久間朱莉(さくま・しゅり)2002年(平14)12月11日、埼玉・川越市生まれ。埼玉平成高入学前の18年3月、尾崎将司が設立の「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」に1期生として入門。21年6月のプロテストにトップ合格。25年は4月のKKT杯バンテリン・レディースでツアー初優勝など4勝、年間女王を初戴冠。大東建託所属。155センチ。家族は両親と兄。

▽岩井千(88年のツアー制施行後では日本人初の同一大会3連覇を逃す)「3連覇の意識は全くなかったけど、いい経験ができた。次に出られる機会があれば、また出たい。(主戦場は米ツアーだけに日本のファンから)元気をもらった」

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