<高校ラグビー:茗渓学園31-24東福岡>◇3日◇準々決勝◇花園

 茗渓学園(茨城)が優勝候補の東福岡を破る金星で準決勝に進出した。大越元気主将(3年)の直訴で実現した昨夏のニュージーランド遠征で高速ラグビーに磨きをかけ、前半5-24の19点差をはね返す大逆転劇を演じた。明日5日の準決勝では御所実(奈良)と対戦する。

 ノーサイドの笛が鳴ると、選手は優勝したかのように跳びはねた。力強く抱き合う者もいれば、ヘッドギアを空に投げる者も。3年ぶりに花園に来た茗渓フィフティーンが、3連覇中の東福岡に土をつけた。

 前半はパスワークが乱れ、3トライを献上。5-24で前半を折り返した。しかし、ここから驚異の反撃が始まる。素早いテンポとBKの展開にエンジンがかかると、相手DFもついてこられない。2トライとSH大越主将の2ゴール成功で追い上げ、ついに21分にWTB大芝優泰(まさやす=3年)のトライで24-24の同点。そして28分、ゴール直前の右中間ラックから、大越を起点に左へ展開。ボールが4人の手によって瞬く間にグラウンドを横断すると、最後はCTB高沢正徳(2年)が左中間に決勝トライを決めた。大越も落ち着いてゴールを決め、勝負を決めた。

 全5トライの起点となった大越は「僕からボールを出さないと茗渓のラグビーが始まらない。みんなが信頼して走ってくれた」と笑顔で話した。後半18分には、左中間でのラック前に自ら仲間を集め円陣を組んだ。「ここでトライを取った方が勝てるぞ!」。アドレナリンが噴き出す選手の中に、自然と涙があふれる者もいた。主将の一声がチームを引き締め、直後の同点トライを生んだ。

 昨年7月に初めてニュージーランド遠征に行った。体の大きな選手を擁する現地の学校と練習試合を3試合行い、伝統の高速ラグビーのレベルアップにつなげた。この遠征は、大越と高橋健監督(48)の約束で実現したものだ。同校ラグビー部は台湾遠征が恒例だったが、大越は本場のラグビーに憧れていた。高校進学と同時に、監督にニュージーランド行きを熱望。昨春のセンバツで8強入りしたことで、指揮官がご褒美として夢をかなえた。直後に東福岡と練習試合を行い、2トライ差で勝ったことも自信となった。

 大阪工大高(現常翔学園)と同時優勝した88年度大会以来の頂点へ、あと2勝。大越は「優勝して監督を胴上げしたい。今度は自分が恩返しする番」と話した。勢いそのままに、初の単独優勝に突き進む。【由本裕貴】

 ◆茗渓学園(めいけいがくえん)1979年(昭54)、東京教育大、筑波大などの同窓会(茗渓会)の創立100周年記念事業として設立される。中高一貫教育で、県内屈指の進学校。ラグビーが校技で、学校創立と同時に創部。花園は3年ぶり18回目。主なOBは赤羽俊孝、大友孝芳(伊勢丹)川出宗一郎(新日鉄釜石)谷口到(神戸製鋼)今野達朗(クボタ)。ラグビー部以外のOBに宇宙飛行士の星出彰彦さんや作家の岩崎夏海さんら。つくば市稲荷前1の1。柴田淳校長。

 ◆88年度大会の茗渓学園

 英国に留学経験のある徳増浩司監督が付属中時代から6年間指導した選手を中心に、3回戦で優勝候補の新田(愛媛)を撃破。準々決勝では、伝説のプレーと語り継がれる赤羽の「3人飛ばしのパス」などで天理(奈良)に勝ち、準決勝で淀川工(大阪)を下し決勝進出を決めた。相手は後に日本代表で活躍する元木由記雄を擁する大工大高だったが、決勝当日の89年1月7日朝に昭和天皇が崩御。決勝は中止となり、両校同時優勝となった。明日の準決勝で茗渓学園と常翔学園(大阪第1)が勝てば、幻となった決勝戦が24年ぶりに現実となる。