男子200メートル個人メドレー決勝で、リオ五輪400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(22=ブリヂストン)が1分56秒01で銀メダルを獲得した。最終日30日の男子400メートル個人メドレーでも、萩野、瀬戸の日本勢とケイリッシュとの三つどもえによる金メダル争いになりそうだ。

 世界の頂点は逃した。昨年リオ五輪と同じ銀メダルの結果に、萩野は「力不足です。悔しいです」と唇をかみ締めた。2種目目の背泳ぎまではトップも、平泳ぎでケイリッシュに抜かれ、最後の自由形でも振り切られた。ただ、絶不調に陥った大会前を考えれば価値あるメダルと言っていい。

 15年に自転車で転倒して右肘を骨折。リオ五輪金メダル後の昨年9月に手術。治療、リハビリの期間もあり「(骨折から)2年間で半年間も水泳をやっていない」。泳ぎのベースにわずかな狂いが生じていた。

 5月のジャパンオープンでは出場5種目で優勝1種目に終わった。少しでもうまくいかないことがあると不安になりリズムが狂う。「この間、土曜日曜で悪いことを数えたら13個あった…」と口にしたこともある。「どうしても僕は弱い人間なので。正直、情けない」と負のスパイラルに落ちていった。

 「自由形の泳ぎ方がわからない」。6月の和歌山選手権では得意泳法がしっくり来ずに、困惑した。子どものころから何も考えなくてもできた。「タイムが出ないから夜も眠れない。正直、気持ちがしんどい」。ヘッドホンをして殻に閉じこもった。ある選手が「今日、ハム(萩野)が誰ともひと言も口をきいていない」と驚いたほどだった。

 6月にスペイン高地合宿を敢行。練習の合間には平井監督に渡された池波正太郎著「男の作法」を開いた。粋な男のあり方が書かれたエッセーを最後まで読んで「自分本位に考えるな、ということですね」。自由形を回避し、最初の種目200メートル個人メドレーに照準を合わせた。

 最終日に控える、リオ五輪金メダルの400メートル個人メドレーで金メダルを狙う。