日本人初の五輪2種目制覇が現実味を帯びてきた。女子1000メートルで短距離のエース小平奈緒(31=相沢病院)が、1分13秒99で同種目のW杯初優勝を果たした。連勝した500メートルの勢いに乗り、スタートから積極的なレースを展開。ただ1人1分13秒台の圧勝劇で、岡崎朋美に並ぶ日本女子歴代最多のW杯通算12勝目を飾った。1500メートルを制した高木美帆(日体大助手)も1分14秒45で2位に入り、好調日本勢のワンツーフィニッシュとなった。

 1分13秒99。自らのタイムを確認すると、冷静な小平が拳をぐっと握りしめた。過去2位6回、3位4回のW杯1000メートルで初めての頂点。すでに500メートル2本、1500メートル1本を滑り、疲労が残る中でも、しなやかな滑りに衰えはなかった。スタートから攻め、中盤からは1ストロークでぐんぐん伸びる。世界記録保持者ブリトニー・ボウ(米国)が持つリンク記録に0秒09に迫る好記録でレースを制すと「シーズン前から13秒台を意識していた。13という数字を見られたことは次への勢いになる」とうなずいた。

 今大会で3勝を挙げ、あこがれの先輩にも肩を並べた。W杯の通算勝利数12は、98年長野五輪500メートル銅メダリストの岡崎に並ぶ日本女子歴代最多。3歳でスケートを始めた小平にとって、その滑りは、同五輪で金メダルを取った清水宏保とともに、理想そのものだった。テレビ番組の特集があれば必ず録画し、録画を忘れると、泣いて悔しがった。同五輪の500メートルで岡崎がマークした「38秒55」という数字は今でもすぐに出てくるほどだ。

 国内外で18連勝中と金メダルが本命視される500メートルに続き、1000メートルでもメダル候補、金メダルにも手が届く位置にいることを証明した。勢いを加速させる31歳は、それでも「まだまだ」と繰り返した。過去2度の五輪は5位が最高。悲願の頂点に向け「やるべきことはたくさんある。高められるだけ高めていきたい」と表情を引き締め直した。【奥山将志】