カヌー禁止薬物混入問題を受け、日本連盟の春園長公常務理事は10日、加害者の鈴木康大(32=福島県協会)を事実上の永久追放にするとの見通しを明かした。鈴木は弁護士を通じて自筆の謝罪文を報道各社に送り、被害者の小松正治(25=愛媛県協会)は合宿先の石川県で心境を吐露した。薬物混入問題に付随して発覚した鈴木による窃盗問題の被害者は小松も含めて5人に上り、そのうち4人とは示談が成立していることも明らかになった。

 石川県警は鈴木から任意で事情を聴くなど捜査を進める。明らかな健康被害や有形力の行使があれば、傷害や暴行の容疑で立件が可能になるが、専門家からは「ハードルは高い」との声が上がる。

 薬物は筋肉増強作用があるサプリメントだったとみられる。傷害容疑について、元裁判官の森炎弁護士は「嘔吐(おうと)を繰り返すなど健康被害の立証が必要」と指摘。また薬物混入の行為は「有形力の行使」に該当しないとして、暴行容疑の適用も否定的だ。窃盗容疑は競争相手への「ねたみ」が動機となった可能性があるが、森弁護士は「刑事裁判では自分のものにしようとする『不法領得の意思』を柔軟に解釈する。窃盗容疑の適用は十分可能」とみる。

 刑事事件として立件は可能か。県警幹部は「小松選手の体に健康被害がないなら、傷害は難しいだろう。窃盗も動機面の解明が今後焦点となる」と話している。