女王に復活の兆しが見えた。2月開幕の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)でメダル候補の高梨沙羅(21=クラレ)が、予選1位で今日13日の本戦に進んだ。昨季、同競技で男女を通じて最多54勝に王手をかけながら5戦足踏みをしているが、冬の国際大会で1回のジャンプで首位になるのは今季初、昨季を通じても19本ぶりと上昇ムード。五輪代表決定後初のW杯(ワールドカップ)で大台を突破する。

 穏やかな表情に確かな自信がにじんだ。高梨が地元で久しぶりに「定位置」に戻ってきた。冬の国際大会で1回のジャンプでトップに立つのは実に19本(8戦)ぶり。今季初めて首位で本戦に進み、同競技として男女を通じた最多54勝が近づいた。「結果としては素直にうれしい。でも、その中でも課題が出たジャンプだったかなと思うので、しっかり次につなげていけたら良い」と笑みを浮かべた。

 試練を乗り越えた。宮の森らしく風が秒単位で変わる。ジャンプに不利な追い風を受けたが、飛び出しでしっかり力を伝えて舞い上がると、空中で風をとらえ95メートルまで飛んでいった。直後に飛んだライバルのアルトハウス(ドイツ)、ルンビ(ノルウェー)は有利な向かい風だったにもかかわらず、それぞれ93、94メートル。五輪イヤーに入り20センチ切った髪とともにW杯前半4戦の悪夢を振り払った。「(公式練習の)1、2本目は板の開きが気になったので3本目は気をつけながら飛べたところがうまくはまった」と満足げに振り返った。

 今年の初戦に予定していた6日開幕のW杯第2戦(スロベニア)が雪不足で中止。国内に残ったことで濃密な時間を過ごした。今季のW杯4戦は、海外勢のレベルが急激に上がったこともあり、3位が2度だけだったが、年末年始は札幌から長野・白馬へ移動してジャンプ練習を敢行。本数は約20本ほどだったとはいえ、内容にこだわり精度を上げてきた。「少しお尻が高くて上半身が前に潜り込んでしまうアプローチ(助走姿勢)だったので、そこを修正した」と話す。

 予選後、札幌市内で行われたゼッケン授与式に参加した。集まったファンに「みんなが喜んでくれるジャンプがしたい」と力を込めた。地元から五輪金メダルへの足掛かりをつくる。【松末守司】