世界168位の西岡良仁(22=ミキハウス)が、左膝前十字靱帯(じんたい)断裂のけがから約10カ月ぶりのツアー復帰戦を金星で飾った。第27シードで世界29位のコールシュライバー(ドイツ)を6-3、2-6、6-0、1-6、6-2のフルセットで下し、2年連続で初戦突破した。世界41位の杉田祐一(29)も第8シードで世界9位のソック(米国)に勝ち、初の2回戦進出。4大大会の1大会で複数の日本男子がシードを破ったのは、31年全仏以来87年ぶりの快挙となった。

 西岡は両手で顔を覆い歓喜に酔った。ツアー本戦の勝利は昨年3月にけがをして以来初めて、4大大会でも昨年の全豪以来1年ぶり。錦織圭以外の日本男子が4大大会でシードを破ったのは、74年全仏1回戦の神和住純以来、44年ぶりの快挙だった。「(以前の)いいイメージが残っていた。トップ選手に(前)勝った経験はなくならない」と巧みな球さばきで、見事な復活劇を演じた。

 持ち味の独特なリズムは健在だ。相手のタイミングを外し、体勢を崩すプレーで、12年ウィンブルドン8強を追い込んだ。最終セットにもつれる一進一退の攻防も、最終セットは一気に4ゲームを連取。「(相手を崩す)自分のいいところを出せた」と金星に突き進んだ。

 昨年3月のマイアミ・オープン2回戦。急に足に力が入らなくなった。試合を途中棄権し、帰国して手術。当時、世界ランクを自己最高の58位に上げて、錦織に次ぐ2番手に急成長した直後のけがだった。プレーできない分「逆にいろいろできる」とSNSやネットを使ってテニスの魅力を発信。明るく振る舞った。

 ただ、リハビリは「本当につらかった」。最初は歩く練習から。それに比べれば「テニスの試合の方がまだまし」。プレーが少しできるようになると「他の選手の練習が目に入って(動けない自分が)もどかしかった」。昨年11月に初めて実戦形式の練習を早大テニス部の選手と行い、1ゲームしか奪えなかった。「めっちゃ悔しかった」。負けず嫌いの火だけは、決して消えなかった。

 リハビリの息抜きで大好きな乃木坂46や欅坂46のライブに行き、気持ちを切り替えた。すべてはトップに返り咲くため。そして、ついにその日がやってきた。「コートに立てたことが本当にうれしかった」。自身初めての4大大会シード撃破。つらい10カ月がようやく実を結んだ瞬間だった。【吉松忠弘】

 ◆WOWOW放送予定 16日午前8時55分から。午後4時50分から。ともにWOWOWライブ。生中継。男女シングルス1回戦ほか。