【ニューヨーク=吉松忠弘】14年決勝のリベンジだ! 世界19位の錦織圭(28=日清食品)が、14年決勝で敗れた同7位のチリッチ(クロアチア)に2-6、6-4、7-6、4-6、6-4で雪辱し、2年ぶり3度目の4強に進出だ。4時間8分の熱戦を制し、生涯獲得賞金は2000万ドル(約22億円)の大台を突破。準決勝では14年準決勝の再現となる同6位のジョコビッチ(セルビア)と対戦する。

女子の大坂なおみ(20)も、大会日本女子初の4強に進出。日本勢のアベック4強は4大大会で初の快挙となった。

14年決勝から丸4年。強い錦織が完全復活だ。15年にはまさかの初戦敗退を味わい、勝ちきれない時期もあり、そして右手首のケガが襲った。苦難の道のりを乗り越え「また準決勝の舞台に戻って来られた。まだまだ上に行きたい」。復帰後、最高の感情がコート上で爆発した。

試合開始から、すでに4時間が経過していた。訪れた最初のマッチポイント。相手の時速200キロを超えるサーブに「100%こっちに来ると思った」とコースを読んだ。この日「命だった」という錦織の矢のようなフォアのリターンが抜けていった。

第1セットからチリッチの完璧なプレーに押され、2-6、第2セットも2-4まで追い込まれた。ストレートで敗れた14年決勝の悪夢がよみがえった。「自分が何もできずに、ミスも早い。一緒の展開だと思った」。しかし、同じ屈辱を味わうわけにはいかない。

重圧を振りほどき、ラケットを夢中で振った。「リズムが取り戻せた。ようやく吹っ切れた」。一気に4ゲームを連取し逆転。第3セットもタイブレークで奪うと、最終セットで追いすがる相手を振り切った。

合計の獲得点ではチリッチの152に対し、錦織は144。約2ゲーム分の8点も負けていた。第2セットの逆転と第3セットのタイブレークを制したのが大きかった。勝負がかかる大事なポイントを押さえ、要所を締めた。テニスでは負けたが、勝負には勝った。

何という男だろう。右手首のケガから復帰して、まだ7カ月しかたっていない。復帰初戦だったツアー下部大会では、1回戦さえ勝てなかった。口さがない人は「錦織はもう終わった」とさえ言った。それが、3度目の4大大会4強入りだ。「自分を誇りに思う。昨年は、ここでプレーさえできなかった」。

この勝利とミルマンの敗退により、10日発表予定の最新世界ランクで12位以上に復帰することが確定した。勝利の瞬間、両手で何度もガッツポーズ。そして、コートの中央で、両手を突き上げた。その光景は、4年前の準決勝でジョコビッチに勝った時とそっくりだった。