今季最終戦の女子フリーで紀平梨花(16=関大KFSC)が138・37点を記録し、5位となった。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒し、2本目は2回転半からの連続ジャンプ。合計222・34点で自己記録には及ばなかったが、グランプリ(GP)ファイナル優勝などシニア1年目を駆け抜けた。坂本花織(19=シスメックス)は146・70点の3位で、SP、フリー、合計(223・65点)の全てで自己ベスト。日本は104点の2位で2連覇を逃し、117点の米国が優勝した。

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紀平は「ごめんなさい」とつぶやき、平成最後の演技を締めくくった。冒頭の3回転半で転倒し「2本目がバッチリと決まる自信はあまりなかった。安全にいった」と続くアクセルは2回転半を選択。中盤のルッツ-トーループの連続3回転は、トーループの着氷時に体を氷へと打ちつけ「持ちこたえた思いはあるけれど、反省しています」と4分間の舞を総括した。

今大会の大きなテーマはミスが続いていたSP。そのSPで世界最高点を更新する好発進だったが、それゆえ「気合を入れすぎた。間の日(12日)に体がガチガチだった」。皮肉にも反動となって返ってきた。

フリーではジャンプの失敗が目立つも、スピン3つとステップは全て最高のレベル4。「緊張する暇もなく、1秒に全力を尽くしていた」。今、持てる力は全て出し尽くした。

大躍進のシニア1年目は、22年北京五輪金メダルを本気で目指す足がかりになった。姉の影響で競技を始めたのは4歳。当初は4回セットのスケート教室で楽しさを覚えた。小1の冬からは4年間、大阪・難波のリンクで53年度から全日本選手権2連覇を果たした山下艶子さん(91)に師事。山下さんといえば、全日本選手権10連覇を達成し、後に浅田真央を指導した佐藤信夫氏(77)を手がけたフィギュア界のレジェンド。その彼女をも「『痛いだろうな』という転び方をしても、平気な顔をしていた」と驚かせた。

小学校の800メートル走で遅れてリンクに現れても、すぐにスピンやジャンプ練習に入るのが紀平だった。山下さんは「いつもすぐに靴を履き替え、誰とも話をせずによく練習していた」とし「どこかで会うことがあれば『(浜田美栄コーチの)今の練習を続けなさい』と声をかける」と優しくほほえむ。培った強固な土台は、昨年9月から10戦を駆け抜けるパワーになった。

「やっとシーズンオフになって、4回転を練習する時間が増える」。令和元年の来季へ、紀平の表情はすがすがしい。その視線は常に、前を向く。【松本航】