フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルで2位だった男子の羽生結弦(25=ANA)が8日、イタリア・トリノで一夜明け会見を行った。

大会中の公式練習で挑戦したクワッドアクセル(4回転半)への思いを語り、出場が濃厚な来年3月の世界選手権(カナダ)でプログラムに組み込むつもりであることを明かした。

主な一問一答は以下の通り。

-演技を振り返って

羽生 いろいろな気持ちはやっぱりありまず。正直言って、この構成(4回転ジャンプ4種5本)にできればなりたくなかった。一応練習しといてはよかったなって思います。この構成を練習した回数と言ったら、通しは1回ぐらいしかできていない。ただ、やっぱり試合は大変だったなとも思いますし。4回転ループと4回転ルッツが跳べるようになったというのはすごく大きな1歩だったと思う。同時に、つなぎの部分だったり音楽だったり表現だったり、そういったものを感じてスケートしないと自分がスケートをやってて腑に落ちないなって昨日考えながら夜を過ごしました。

-練習でアクセルの完成度を見せてもらいました

羽生 すみません。全然完成してないんですけど。恥ずかしい。

-世界選手権あたりには、というプランはあるか

羽生 はい。頑張ります。そのつもりで。本当は正直な気持ちを言ってしまうとショートが終わった後に割と絶望していた。13点差以上というのは、ジャンプ1本増やしたからとか、4回転にしたからと言って縮まるものじゃないっていうのはすごく分かっていた。彼(ネーサン)自身も5回跳んでくるだろうなっていうことはすごく分かっていましたし、こんなプレッシャーでは絶対につぶれないっていう強さをすごく感じてもいました。難しいなって感じはありました。だからこそ、ここで何か爪痕を残したいっていう気持ちがあった。いろいろ考えたんです。何で今回コーチが来られなかったんだろうとか。どうしてショートでミスしてしまったんだろうとか。あんまりそういう運命主義者ではないんですけど僕は。でも何かしらの意味がそこにあるんだろうなって考えて。もしそこに意味があるんだとしたら、ストッパーがいない今だからこそ、自分だけで決められる今だからこそここでやってもいいんじゃないかなって自分を許してしまって。結果として跳べなかったですけど、あの練習はかなりいろんな覚悟を決めた。アクセルの練習をするのは、毎回そうなんですけど、いろんな覚悟は決めていて。やっぱり回転がまだ足りきってないジャンプの方が多いので、いつどこか痛めてもおかしくない着氷だったり転倒をするリスクもありますし。後は、試合の公式練習だからこそ気合が入りすぎて、やっぱいつもより浮くだろうって。そうなった場合にやっぱり前にケガした時と同じ状況になって、大きなケガをしてしまうリスクがある。もちろんこの時期にケガしてる確率も高いので、そういう意味でも怖いなって。

-(到着が遅れたブリアン)コーチが一緒ならアクセルの練習はしなかったか

羽生 しなかったですね。多分止められたと思いますやっぱり。何が大事なんだって話になった時に絶対に試合の方が大事なので。それは自分でも分かっていたんですけど、でもこの絶望的な状況の中で、ここで何かを残さないといけないって使命感がすごくあったんですね。どっちにしろあの構成で完璧なノーミスをすることは多分不可能に近かったと思うんですよ。多分10%もなかったと思うんですよ確率的に。それに懸けるんだったら、それに懸けて勝てないのだったら、だったらここでちゃんとやるべきことやろうよって。その中で思ったのは、自分の中でやるべきことはここで4ルッツをしっかり跳びきることだったし、ここでアクセルを完成させたいって気持ちでした。

-モチベーションを上げるためのものは何か

羽生 何て言うんですかね。何か跳びたい気持ちがすごい強かったので。降りたいって気持ちがすごく強かったので。何か試合だとノーミスしないといけないって気持ちが常につきまとってたんですね。まぁ、いつもなんですけど。ただそれがないじゃないですか練習だと。この時間までとりあえず跳べるようになればいいって、何回でも挑戦できる。その過程を見てもらえるっていうのもまたモチベーションにもなりますし。そういった環境の中で降りてやるっていうのは、全く試合とは切り離して考えられたからこそ、何かふっきれたというか。もう練習というか4回転アクセルだけに集中しきれたなっていう風には思います。

-ちゃんとしたいスケートと4回転アクセルの両立は厳しいと思うが

羽生 そうだと思います。それは僕も重々承知です。やっぱり。でもやらなきゃいけないと思うんですよ。(フリーが)終わった後の囲みの時でも「ジャンプ大会じゃないんで」って言ったんですけど、今回の自分の演技は完全に一生懸命なだけ。ただひたすらジャンプ大会みたいな感じが自分の中ですごくあった。競技としてどうなのって話になった時に、やっぱりそれはフィギュアスケートじゃなくてもできるじゃんっていう気持ちはあるんですよね。だから自分にとっては4回転アクセル、4回転半ていうのは王様のジャンプだと思います。それをやった上でジャンプだけじゃなくて、フィギュアスケーターとしてちゃんと完成させられるものにしたいって気持ちは強いです。ただ前提としてそれがかなり難しいことは自分でもかなり分かっています。