東京オリンピック(五輪)代表が、新世代の勢いにのみ込まれた。男子シングルス決勝で張本智和(16=木下グループ)が宇田幸矢(18=エリートアカデミー)に3-4で敗戦。

女子シングルス準決勝では、女子と混合の両ダブルスも含め史上初の3年連続3冠を目指していた伊藤美誠(19=スターツ)が早田ひな(19=日本生命)に3-4で敗れた。早田は決勝でも同代表の石川佳純(26=全農)を下し、伊藤と組んだ女子ダブルスと合わせ2冠達成。男子の宇田とともに、シングルスでは初の全日本制覇となった。

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女子の表彰式を待つ控え席で、張本はがっくりとうなだれ頭を抱える。首にかけられた銀メダルは、表彰台を降りると、すぐに外した。会見で全日本で得た収穫を聞かれ「2位なので特に何もない大会だった」とぶっきらぼうに言うほど、悔しさを抑えきれなかった。

1-3で迎えた第5ゲームで、8-10と1度はマッチポイントを握られた。それでも臆することなく、フォア強打の打ち合いを制し、10-10に追いつく。このゲームを13-11でものにし、巻き返しにつなげた。

敗戦のピンチ。受け身になりがちな場面でも攻めきる、精神面の成長はうかがわせた。準決勝でも宇田と同じ高校3年の戸上に、1-3と追い込まれてから、大逆転勝利し、決勝に勝ち上がっていた。昨年12月のグランドファイナル準々決勝。当時世界ランキング1位だった許■(中国)に対し、3度マッチポイントを握りながら、金星を逃した。「相手は追い込まれても表情を変えず『ここから巻き返す』という精神で向かってきていた。自分もそうならないといけない」と中国で誓っていた。

学んだ「許■のメンタル」を全日本の準決勝で実践し、戸上に「追い込まれても全く表情が変わらず、何をしてくるのか読めなかった」と言わせた。決勝も最終ゲームで4-0とリードし、同じ流れかと思われたが、宇田のフォア、バック両ハンドから繰り出される強烈ドライブに押し込まれ、最後は力負けした。

19年シーズンに指摘された格下相手に受け身となる姿勢は大きく改善したものの「決勝では受けてしまった」と反省点が残る結果に。「厳しい場面から良いところまでいったけど決勝で、ここまで確立した自信が一気になくなった。また一からやらないと」と、自分に厳しく言い聞かせた。

東京五輪は半年後に迫るが、日本のエースはまだ16歳。この敗戦をバネに成長できる伸びしろは、計り知れない。【三須一紀】

※■は日ヘンに斤