2度の4大大会優勝を誇る世界ランキング10位の大坂なおみ(22=日清食品)が、左太もも裏のけがのため、29日(日本時間30日)の決勝を棄権すると発表した。

大坂は、黒人男性銃撃事件への抗議で準決勝を棄権すると表明。しかし大会が抗議に賛同し、全試合の1日休止を決めたことで、棄権を撤回。28日の準決勝でメルテンス(ベルギー)にストレート勝ちした。けがのため、ツアー通算6度目の優勝は消滅も、一連の抗議行動でアスリートとしての存在感を示した。

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大坂が力尽きた。準決勝第2セットで「とても強い痛みを感じた」左太ももが「一晩たっても回復しなかった。棄権することを申し訳なく思う」と、この日の午前中に棄権を決めた。しかし、コロナ禍の中の復帰初戦、約6カ月半ぶりの実戦でいきなりの決勝進出。抗議行動などもあり「感動的な1週間だった。最高のサポートに感謝したい」とコメントした。

すでに全米の1回戦の日程が発表され、大坂は31日(日本時間9月1日)のセンターコート夜の部第2試合に入った。相手は土居美咲で「とても危険な相手。ベストを尽くすだけ」と話すが、この日を入れて、開幕まで2日しかない。プレーできるかどうかは未定だ。

一連の抗議行動による反響の大きさに、28日(日本時間29日)の準決勝前日の夜、「胃が痛んで、寝汗をかいた。なかなか眠れなかった」という。そうでなくとも「試合の前夜は寝苦しい」。そこに、違った意味で、「絶対に負けられない」との思いが募った。

そんな重圧は、抗議行動を起こした強烈な意思で振り払う。コートに入場するとき、ウエアの上から、黒人差別に抗議する「Black Lives Matter(黒人の命も大事だ)」とスローガンが書かれたTシャツを着た。言葉とともに描かれた腕と拳は、力強く天に突き上げられていた。

抗議への発端は、26日の準々決勝に勝った後のことだった。米プロバスケのNBAでウィスコンシン州に本拠地があるバックスが抗議行動としてボイコット。プレーオフ3試合が延期になった。そのニュースを見た大坂は、「私も声を上げないといけないと思った」という。その思いが、抗議行動につながった。惜しくも決勝は棄権したが、大坂が見せた行動は、全世界の人の心を動かした。