来夏に延期された東京オリンピック(五輪)で卓球女子代表の伊藤美誠(19=スターツ)が18日、新型コロナウイルスによる中断から11月に再開する国際大会(中国)に出場するため成田空港から出国した。渡航先では感染症対策で10日程度の隔離が義務づけられており、同日オンラインでの合同インタビューに応じた伊藤は「命がけ」の遠征と表現するほど、厳しい準備状況を吐露した。11月8~10日に女子ワールドカップ(W杯)、同19~22日に国際卓球連盟(ITTF)ファイナルが行われる。

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中国での隔離期間についてITTFを通じた情報が出発直前まで、ころころと変わった。関係者によると「練習が出来ない隔離」は当初、入国から3日間とされてきたが、ここ数日でそれが8日間程度に変更された。少し早めに入国する伊藤はそれが10日程度になると見込まれる。隔離中に外出すると罰則も科される可能性がある。関係者によるとその間も、中国チームは練習ができるという。

大会を直前に控える選手にとって非常に厳しい環境となったが、伊藤は戸惑いながらも来夏の五輪のため、意を決した。

伊藤 空港から試合会場まで13、14時間のバス移動。感染対策は十分だとは思うけど、バス移動のときでもPCR検査受けたりとか。飛行機じゃないのにPCR受けるんだなと思った。一応念のため、幅広くPCR検査とかで対策をしていると思ったので、対策としては安心感はある。

ただ出発直前まで不確定なことが多いらしく、伊藤陣営もギリギリまでITTFに質問を投げかけた。

伊藤 出発するまでに全部決まらないと、選手も安心できない。中国に行ってから変わったのでは言葉も通じなかったり、やりとりができない場合も出てくる。感染対策以外で決まってないことは多々ある。私たち選手は試合だけに集中したいと正直思っている。

実際に「決まっていないこと」とは何なのか。

伊藤 もともと説明を受けて決まっていたものが直前になって変わるんです。現地での練習もどうなるか分からない。本当に外に出ちゃいけないのか。ご飯も一応運んでもらえるらしいけど、こちら側から持参して良いのかも(直前まで)決まっていなかった。ご飯は大事なので自分で持っていきたいというものあった。

コロナ禍での遠征は、通常時の準備とは違い、戸惑いの連続だった。

伊藤 通常、11月8日の開幕だったら普通1日ぐらいに出国する。その準備も全然違う。いつもだったら試合のことだけ考えて、持ち物も自由。やはり今回は結構、制限はあると感じる。

政府が日本オリンピック委員会(JOC)の強化指定選手らに関しては、国際大会から帰国したアスリートに対し、14日間隔離を緩和する措置を始めた。それでも開催国の隔離措置など、まだまだ制限がある中、国際大会に出場する決断をした理由は何なのか。

伊藤 五輪(のシードなどに影響する)ポイントがあったので。出るという決断は早かった。実際、ポイントがなかったら絶対に行ってないと思う。これだけ命がけで行っているものなので。周りの方が動いてくださって、やっとチケットが取れたりとか。普段だったら協会含めてみんなで動いて、チケットを取ったりする。ITTFに(直接)質問することもあまりない。今回は本当に、いろいろと気になることばかりでした。【三須一紀】