ドーピング検査陽性で2年の資格停止処分を受けた競泳男子の藤森太将(29)が、東京五輪に向けて復帰することが10日、分かった。練習は今月1日から可能となっており、試合も処分明けの来年1月1日から出場できる。藤森は復帰レースに同1月10日の静岡県新春フェスティバル大会(富士水泳場)を予定する。

2年1カ月ぶりのレースで、日本選手権(来年4月)の参加標準記録をクリアすれば、五輪代表をかけた一発勝負に出場できる。父の善弘コーチ(56)は「結果的にはよかったかなあ」と複雑な心境を口にした。

藤森は、16年リオデジャネイロ五輪200メートル個人メドレー4位。銅メダルまで0秒16差だった実力者。だが18年12月の世界短水路選手権、遠征先の中国で陽性反応が出た。藤森は、スポーツ仲裁裁判所に、禁止物質が食事に混入した可能性を主張したが、認められず。だがコロナ禍による五輪延期で東京への道が復活した。練習可能になった今月1日付で前所属の木下グループとも再契約した。善弘コーチは「ずっと気にかけてくださっていた。こんなにありがたいことはないです」と心から感謝した。

藤森の弟、丈晴(26)もサプリメントの成分表に記載がない混入物質(汚染製品)が原因でドーピング検査陽性。昨年7月から資格停止4カ月となった際、善弘コーチは「これ以上ないほど注意していた。普通に考えて兄弟2人で違反はありえない。なぜ陽性なのか」と言った。弟はすでに復帰しているが「今でも怒りしか感じない」と父。ただ定められた期間を終えて兄弟同時五輪出場も可能になった。ともに個人メドレーが専門で、丈晴は「200メートルは兄、400メートルは自分がやる」と気合。この2種目はすでに瀬戸が内定。残り1枠を萩野公介らと争う。

◆藤森太将(ふじもり・ひろまさ)1991年(平3)8月7日、神奈川県生まれ。静岡・飛龍高-日体大-ミキハウス-木下グループ。16年リオ五輪は200メートル個人メドレー4位。18年12月にドーピング検査陽性で2年間の資格停止を受けた。176センチ、72キロ。