16歳の新星が世界に飛び出す。留萌高の岩佐奏葉(かなは、1年)が、27日からオーストリアで開幕するバイアスロン世界ユース・ジュニア選手権に初出場する。小6時に、冬季オリンピック(五輪)選手輩出を目指し設立された北海道タレントアスリート発掘・育成事業(TID)で選出され、競技開始。夏場は高校の図書室で射撃練習をする“ライブラリースナイパー”が、地道に培った力を、国際舞台で初披露する。

ユースの部出場5選手で岩佐が唯一の初出場。「何とかみんなに食らいついていきたい」と気を引き締めた。中学では主に水泳、陸上部に所属し体力をつけ、競技につながる距離スキーは陸上の冬トレで取り組む程度だったため、高校は「滑る技術をつけたい」と強豪、留萌高に進学した。1月の全道高校を1年生で制した神幸太朗らと厳しい練習を続け、昨年12月の選考会で代表権獲得。「同学年の神君も頑張っている。負けられない」。19歳まで出場可能なユースの部で、16歳が“下克上”を狙う。

シーズン中の射撃はスキー練習の合間に屋外で行うが、夏は高校の図書室を使う。「廊下だと、見られて気になる。図書室の奥行きが長く距離を取れたので」。国内では20歳未満は実弾練習できないため、日本連盟からビームライフルを借り、静かな図書室の一角で黙々と感覚を磨いてきた。今大会は海外のため実弾を用いる。中学時代の海外遠征で経験して以来の実弾射撃に「現地練習で、風の影響を頭に入れたい」と思い描いた。

将来の目標は、冬季五輪出場だ。9年後の30年には出身地札幌が開催を目指しており「札幌の前に1回経験して、地元の大会で活躍できたら」。まずは世代別世界大会で経験を積み、1歩ずつ夢の階段を駆け上がっていく。【永野高輔】

◆岩佐奏葉(いわさ・かなは)2004年(平16)12月26日、札幌市生まれ。5歳から札幌緑丘小3年まで札幌アルペンスキースポーツ少年団に所属。札幌啓明中では水泳、陸上部に所属しながらスキーの練習に励む。中1で水泳の全道中学50メートル、100メートル平泳ぎ出場、中2で陸上1500メートルの全道大会出場。昨夏の全日本サマーバイアスロン・ユースの部総合3位。好きなアーティストは4人組バンド「緑黄色社会」。家族は両親と姉と妹2人。169センチ、58キロ。血液型B。

<大幅差縮める狙い>

日本連盟は14年からTIDで才能を発掘し、19年からユース・ジュニア世界選手権に選手を派遣し、経験を踏ませている。五輪での日本勢は、98年長野大会女子15キロに出場した高橋涼子の6位が過去最高で、18年平昌大会も立崎芙由子の7・5キロスプリント42位が最高と、大幅な世界との差を縮めていくのが狙い。88年カルガリー五輪代表の滝沢明博監督(59)は「やりたい選手は増えている。将来につなげてくれたら」。岩佐ら若い選手の成長が、次代の競技発展、普及の一翼を担っている。

<道産子3人も出場>

岩佐の他に3人の道産子高校生がユースの部に出場する。上田は3度目の出場で、昨年の男子7・5キロスプリントで60位に入り、上位60人が進める10キロ追い抜きに男子で唯一出場(59位)した。「今回はスプリントで30位を目指したい」。伊藤は2度目の出場。地元美幌に帰省していた昨夏、五輪4大会連続出場の石田正子(40=JR北海道)から膝の角度やストックの使い方を指南され「世界の知識を大舞台で生かしたい」と意気込む。昨年女子6キロスプリント45位の吉田も、2年連続で出場する。