柔道の世界選手権(6月、ブダペスト)最終選考を兼ねる全日本選抜体重別選手権の最終日が4日、福岡国際センターで行われる。

男子7階級が実施され、先月24日に53歳で死去した92年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦さんの次男、玄暉(22=旭化成)が60キロ級で出場する。

古賀さんが創設した町道場「古賀塾」の元コーチで、柔道界の画伯こと石川裕紀さん(32)が、玄暉の初優勝を祈願して古賀さんの似顔絵イラストを作成した。1日に弔問した際に古賀さんの印象的な笑顔を思い出し、ほほ笑んだ平成の三四郎を描き上げた。60キロ級の元日本代表で同大会3度準優勝を誇る石川さんは「結果が一番の恩返し。玄暉くんには古賀先生に優勝をプレゼントして、この絵のような笑顔を届けてほしい」と激励の言葉を送った。

石川さんは古賀塾でコーチを務めていた時、古賀さんの指導法に感銘を受けた。

1・「はい」と言う素直な心

1・「ありがとうございます」と言う感謝の心

1・「私がします」と言う奉仕の心

1・「すみません」と言う反省の心

1・「おかげさま」と言う謙虚な心

道場に掲げられている「塾五訓」を学んだ子どもたちが、柔道以外の何事にも積極的に取り組んでいたという。

「古賀先生は子供の接し方が本当に上手な方だった。保護者も巻き込んで、いつも笑いが絶えなかった。スーパースターなのに気さくで、自分の子供のように塾生に愛情を注いで素晴らしい指導者だった」

石川さんは東欧に位置するモルドバの代表コーチを務めていた昨年3月、コロナ禍の影響で行動制限を強いられ、趣味の絵描きを遊び感覚で始めた。練習の合間を見て、柔道のトップ選手の似顔絵を数多く描いた。特徴をつかんだ柔らかいタッチのイラストは、ネット上で評判を呼んだ。東京五輪男子60キロ級代表の高藤直寿(27=パーク24)がツイッターに投稿すると、賛辞の声が相次いだ。男子代表の井上康生監督(42)らもSNSのアイコンに使用。昨夏には玄暉からも依頼があり、18年世界ジュニア覇者のイラストを作成した。

4日の大舞台は、24年パリ五輪へつながる第1歩となる。柔道界の画伯は、亡き父へ恩返しを誓う22歳に「古賀魂を継承し、お父さんのような思い切りの良い柔道で福岡の会場を沸かせてほしい」と期待を込めた。【峯岸佑樹】