B1に仙台89ERSが帰ってきた。

6季ぶりに復帰したB1で勝ち抜くためには、新戦力の活躍が必須となる。日刊スポーツ東北版は、B1琉球から加入した小寺ハミルトンゲイリー(38)にインタビュー。09年、bjリーグ・滋賀レイクスターズ(現B1滋賀レイクス)に入団以降、数多くのクラブを渡り歩いたベテランが、仙台でも存在感を発揮しチームを勝利に導く。【取材・構成=濱本神威】

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「仙台89ERSは工事現場の人たちみたいだ」。チームに合流して約1カ月半。小寺は今季のスローガン「GRIND!」を引き合いにチームをこう表現した。「工事、建設現場の方は、暑い夏でもタフな仕事をしており、それによって僕らは快適に暮らすことができている。彼らは意図することなく、僕たちが大事にしている『GRIND』を毎日のようにしている」と敬意を払い、仙台のハードワークを「自分の身体を犠牲にしてタフに、ハードに戦う仙台はまさしく工事現場の人たちのようだ」と例えた。

206センチ、130キロのベテランセンターが、仙台の「現場監督」を担っていく。小寺は自身の役割を「でかい身体を使って、ゴール下で簡単に得点させないこと、リバウンドを取らせないことはもちろん、いい外国籍選手がそろった仙台に自分が入ることで、また少し違ったニュアンスを与えられたり、彼らを休ませたりすることができる」と語った。外国籍選手のプレータイムは長くなりがちだが、相手の外国籍選手と対等に渡り合える小寺がいることでプレータイムが軽減でき、より多く休息を与えられるのは好材料だ。また、体格を生かしたリバウンドやディフェンスをはじめ、パスでのオフェンスメークも魅力的だ。

藤田弘輝ヘッドコーチ(HC=36)は「パスがすごくいい」と小寺を評価。24日のB2福島とのプレシーズンゲームでは、小寺のパスを起点に福島を出し抜くシーンが多く見られた。藤田HCは「彼はオフェンスを円滑にする能力にすごくたけている。今季のナイナーズにとって、すごく大きな存在になると思っています」と信頼を寄せている。信条とする強度の高いディフェンスを遂行でき、オフェンスの幅も広げられる小寺が、どっしりとチームを支えていく。

10月1日開幕のB1に向け小寺は「なかなか先のことはイメージできないが、ひとつ言えることは、自分たちは60試合全部でGRINDして、ハードに戦っている。それが簡単に想像できます」と自信をみなぎらせた。小寺を土台にチーム一丸となり、B1仙台89ERSの新たな歴史を築いていく。

▼「GRIND!」 18-19年シーズンからずっと“チームスローガン”だったが、B1に復帰した22-23年の“シーズンスローガン”に決まった。「どんなに苦しい状況であっても、歩みを止めることなく、つらいこと、退屈なこと、苦しいことも、粘り強く、泥臭く、乗り越えていこう!」という思いが込められている。

◆小寺ハミルトンゲイリー 1984年(昭59)8月7日生まれ。米国出身。09年に来日。20年11月、日本国籍を取得。昨季はB1琉球で56試合に出場。チャンピオンシップ6試合にも出場しチームのB1準優勝に大きく貢献した。206センチ、130キロ。