2022年(令4)も残すところわずか。道産子選手らの活躍で沸いた北京オリンピック(五輪)(2月)に始まり、強豪撃破で日本中が熱狂したサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会まで、話題盛りだくさんの1年。あの日、あの時、あの勝負…舞台裏も含めて、担当記者が22年の出来事を振り返る。

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2月の北京五輪で初採用されたノルディックスキー・ジャンプ混合団体で、前代未聞の悲劇が襲った。スーツ規定違反による失格者が女子で5選手も出た。そのうちの1人が日本女子のエース高梨沙羅。彼女が泣き崩れ、憔悴(しょうすい)状態から涙のジャンプを飛んだ姿に、胸が締めつけられた。

現地と日本国内での温度差を感じた。ジャンプでの失格は珍しいことではない。だが、高梨がインスタグラムに真っ黒な画面とともに謝罪文を投稿すると、さらに話題となった。事象に対し「すごい反響だ」と電話で上司に聞いても、ピンと来なかった。検査方法のそもそものルールなどについての議論が活発にされていると知った。これまでジャンプに慣れ親しんでいなかった人も試合を見て、感じて、意見を発信する。これが五輪というものか。そう感じた。

試合翌日の紙面は「沙羅泣かないで」という見出しで1面だった。以降も関連記事を出し続けた。これが一番、高梨を苦しめることになるのではないか。読者の興味や関心に応える記事を書くことが仕事だが、そんな自問自答も繰り返した。先輩記者に相談もした。

高梨はこのまま復帰できず、ジャンプから離れてしまうのではないか。そんな心配もされていたが、3月2日(現地時間)のW杯リレハンメル大会。約1カ月ぶりの試合で優勝を果たし、表彰台の中央で笑う姿があった。今季、「五輪の失敗は、五輪じゃないと消化できない」と、4年後に向けてまた飛び続けることを決断したエース。彼女の強さを感じた。【保坂果那】