広田樹(いつき、21)が大会6冠を飾った。チーム・フリールーティン(FR)、熊谷日奈多(ともに井村ク)と組んだデュエットFRで、ともに出場チーム中唯一の300点超えで優勝。

3日間で7種目に出場し、チーム種目を含む6種目で頂点に立った。身長151センチながら高い演技力が持ち味。同志社女子大薬学部の4年生は、23年の日本代表入りを逃し「最後の日本選手権」と位置づけていた。

最終7種目めのデュエットFRでも優勝を飾った。広田は、ゆっくりと会場を見渡した。今大会6度目となる表彰台のてっぺん。見慣れたはずの景色にも、思いが込み上げた。「毎回の表彰式をしっかり味わって、目に焼き付けました」。目の奥に涙をためながら、スタンドのチームメートへ深々と頭を下げた。

特別な思いで臨んだ大会だった。昨年末、目標だった23年の日本代表入りを逃した。妹の憩(いこい)が、ジャンパーとしての能力を買われて日本代表入り。悔しい思いもあった。普段は薬学部に通う大学4年生で勉強に専念するため、今大会を「人生最後の日本選手権」と位置づけていた。「最後はシンクロをしていて良かったと思って辞めたい」。有終の美を飾るべく、歯を食いしばった。

5冠を達成し、迎えた最終種目のデュエットFR。身長151センチの広田は、身長167センチの熊谷との“16センチ差コンビ”で挑んだ。見せ場はダイナミックなリフト。小さな体を目いっぱい伸ばし、大きく躍動した。その姿に相方は「ジャンパーの役目を、責任を持ってやっていて尊敬する。そんな人と組めてうれしい」と涙。広田は「私1人だと小さくて存在感はないけれど、熊谷選手と一緒に泳ぐことで大きく見えている」と笑顔で感謝を伝えた。

今後の競技継続は「どうですかね」と明言はしなかった。ただ、ひそかに描いている構想がある。「アイスショーがあるのに、アクアショーがないのは何でだろう」。疑問をもとに、表現に特化した場を実現させたいと思案している。「表現が好きな選手が活躍できる場を作れたら。そうすればもっと、シンクロの楽しさを知っていただける」。表彰式で潤ませた瞳は乾いていた。その目はキラキラと未来を見据えていた。