パリ五輪でミュンヘン大会以来52年ぶりの五輪メダルを目指すバレーボール男子日本代表「龍神NIPPON」。

37人の登録メンバーから若手のホープにスポットを当てる連載の中編は、専大に所属する19歳の2メートルアウトサイドヒッター、甲斐優斗(まさと)。エース超えへの決意、そして同大学でともにプレーする兄への思いを語った。【取材・構成=勝部晃多】

  ◇  ◇  ◇  

温厚な19歳の甲斐は、力強く言いきった。「これから石川選手を超えるような選手になりたいと思っています」。2メートルの高さを生かしたスパイク、サーブが武器のアウトサイドヒッターは、同ポジションで代表の枢軸を担うエース石川祐希超えを目標に掲げた。

ブラン監督から「飛躍的な進歩を遂げている。アタックもレシーブも新しい技術を取り入れようとしている。成長を続けるなら(五輪予選に出場できる)Aチームに入る可能性もある」と期待される有望株。日本代表ユニホームには2年連続で袖を通した。昨年は春高初出場でベスト4入りした宮崎・日南振徳高卒業後、18歳で初の代表入り。U-20世界選手権などで経験を積んだ。そして、五輪予選を9月に控える中で背負う2度目の日の丸。「簡単に呼んでもらえるようなところではない。チャンスを逃さない」と力を込めた。

「尊敬する」頼もしい存在がいる。同じ専大でプレーする2つ上の兄、孝太郎。競技を始めた小学2年時から中、高、大と同じ道を進んできた。父が監督を務めていた延岡南バレーボールクラブでプレーしていた小学生時代は「しょっちゅうけんかした」。試合そっちのけで仲たがいもしたが、その背中を追いかけて13年。地元宮崎を離れて専大への進学を決めたのも、兄がいたからだった。今では「自分が悪い時には兄がやってくれる。逆に兄が悪い時は自分がやる」と、互いを高めあう最高のチームメートになった。だからこそ「これまで一緒にバレーしてきて大きな結果を残せていない。最後に大学で一緒にプレーして結果を残せたらって」と胸に秘めている。

兄は日本代表候補の合宿に参加しながらも、今回の選出を逃した。それでも「いずれは兄弟で同じ日本のユニホームを着て頑張りたい」という夢もある。その日に向け、全力でコートに立ち、日の丸のエースを目指す。

 

◆甲斐優斗(かい・まさと)2003年(平15)9月25日、宮崎県延岡市生まれ。小2の時に父が監督を務めていた延岡南バレーボールクラブで競技を開始。宮崎・日南振徳高では3年時に春高初出場での4強進出を支えた。22年に専大に進学し、18歳で初めて日本代表入り。U-20世界選手権などに出場した。身長2メートルのアウトサイドヒッター。

 

◆アウトサイドヒッター(OH) 左右両サイドからスパイクを打つ選手で、得点を期待されるポジション。サーブレシーブなど守備も担うため、オールラウンドなプレーが求められる。ウイングスパイカーと呼ばれることもある。