五輪階級の世界選手権(9月、ベオグラード)をかけたワンマッチが行われ、男子グレコローマンスタイル60キロ級で、東京五輪銀メダリストの文田健一郎(27=ミキハウス)が父としての初勝利で、パリ五輪出場を引き寄せた。
昨年12月の全日本選手権と今年6月の明治杯全日本選抜選手権の優勝者が異なった階級が対象となったプレーオフ。全日本選手権を制したが、5月の練習中に左足のハムストリングを肉離れした。6月の全日本選抜選手権の欠場を決め、世界代表がかかるこの1試合にかけてきた。
全日本選抜を制した河名真偉斗(23=自衛隊)との大一番は、「今までの中で一番、自分のコンディション的には低くて。思い通りに動かせないだろうなって思った」と万全には遠かった。実際、マット上に上がってジャンプすると、下半身がつりそうになった。
豪快な投げなどが魅力のスタイルだが、「取れるところで取る、取らせないところではしっかり守る」と意識を徹底。手堅い試合運びに終始した。第1ピリオド(P)の1分すぎに相手の消極性を引き出して寝技の好機をつくると、リフト技ではなくクラッチをせずに横に転がして2点を稼ぎ、試合を優位に進めた。
第2Pでは逆に寝技で守る側に回ったが、しっかりとしのいだ。途中に左まゆを切って包帯姿になりながら、しっかりと勝ちきった。
「すごい、全ての人に(感謝を)伝えたいんですけど、まずは1月に娘が生まれまして、初めて自分のレスリングを見に来てくれているので、まずは娘に『パパ勝ったよ』って伝えたいです」。
勝利者インタビューでは、会場で見守った生後5カ月の遙月ちゃんに手を振った。妻有美さんと一緒に、初めて試合を見にきていた。
「包帯してるんでかっこ悪いんですけど、次はきれいな顔で、しっかりメダルを持ってみせたいと思います」。
続けて、そう誓った。4年前、五輪の予選となった世界選手権で優勝し、世界王者として臨んだ21年東京五輪では銀メダルに泣いた。
「4年前、東京の予選(世界選手権)で優勝して、ただ東京で取れなくて、すごい悔しい思いをしたので。今回もしっかり予選で優勝して、五輪ではきっちり金メダルを取ってきたいと思います」。
4年前とは違い、家族ができ、娘が生まれた。ケガを乗り越えながら、まずは世界切符をつかんだ。そこで3位以内ならパリの代表に決まるが、目指すものは優勝しかない。そしてその先へ。
「(娘には)勝っているところしか見て欲しくないので。このまま、見に来た試合全部勝ってっていうのは、ちょっとモチベーションになってます」。
4年前の雪辱は、父として必ず。


