22年ぶり2度目の自国開催となる水泳の世界選手権が14日、福岡市で開幕する。金メダルで24年パリ・オリンピック(五輪)代表に内定する競泳の個人では男子で過去、金4個の瀬戸大也(29=CHARIS&Co.)が200メートルと400メートル個人メドレーにエントリー。昨年の前回大会同種目2冠の王者レオン・マルシャン(21=フランス)と真っ向勝負し、来年パリで頂点に立つための布石とする。大会前半の14~22日は飛び込みやアーティスティックスイミング(AS)など、後半の23~30日は競泳などが開催。福岡で計6競技75種目の熱い戦いが始まる。
開幕2週前の6月30日。米国の高地合宿から帰国した瀬戸に充実感が漂った。
瀬戸 パリ(五輪)を見据え、前半から積極的にいく。「スピード」「楽に速く」。そこが詰められたら面白い結果が出ると思う。
覚悟を決めている。21年東京五輪はメダルなし。翌22年1月、16年リオデジャネイロ五輪女子200メートル平泳ぎ金メダルの金藤理絵さん(34)を育てた東海大の加藤健志コーチ(57)に指導を願った。返事は「お前のコーチにはならない。受けたいなら水泳部に入るしかない」。その2カ月後、神奈川・平塚市の同大学近くで1人暮らしを始めた。午前6時に学生と交じって練習。午後は3時から低酸素室で1時間走り、1時間40分の筋トレ。そして7時から再び2時間泳ぐ。家族も背中を押してくれた。
世界水連の大会と五輪で、これまで金66個を含む、126個のメダルを獲得した。だが五輪は、16年リオ大会の銅1つ。「五輪で金を取った時にどういう感情になるのか。最後に挑戦するなら加藤コーチと全力で取り組みたいと思った」。その目標に立ちはだかるのが、21歳のマルシャンだ。
加藤コーチ 例えると、かつての大也は2階建て1億円の“豪邸”だった。マルシャンに勝つには80階にしないといけない。1度壊し、まず地面を深く掘らないと話にならない。
「地面を掘る」作業は限界との戦いだった。今年2~3月の米高地合宿の目標は「1回も休まない」。百戦錬磨の瀬戸が「体が動かない…」と嘆くと、加藤コーチから「五輪で金を取れないのは、その癖だな。最悪の状態でも金を取る。休むな」とゲキが飛んだ。
400メートル個人メドレーの自己記録は4分6秒09。対して「僕は4分1秒台を出す説明ができる」と、得意の平泳ぎにも8つの改善点を指摘された。現在は、そのうち3つ目の内転筋を使ってのしならせるキックに着手している段階だ。
加藤コーチ (80階建てにするための)基礎はできた。福岡では水道も電気も通っていない1階のベースの状態で、マルシャンにどれぐらい迫れるか。その後9月から、クレーンで建てていく。80階まで完成して、大地震が来てもびくともしなかったら、(パリで)金メダルを取れます。
今回は五輪“前哨戦”。瀬戸は、目標を「ドバイのブルジュ・ハリファと聞いています」と高さ世界一828メートルのビルと重ねて笑わせ、言い切った。
瀬戸 福岡では自己ベストを更新して、パリへ勢いづけたい。マルシャンがいなかったら、多分、今も余裕をぶっこいている。五輪は彼の地元。彼がいることで、本気にさせてくれる。
来年5月で30歳。その瞳は輝いている。【松本航】
◆瀬戸大也(せと・だいや)1994年(平6)5月24日、埼玉県生まれ。埼玉栄高から早大。世界選手権では19歳で初出場した13年に400メートル個人メドレー金。19年に200メートル、400メートル個人メドレー2冠を達成するなど、これまで金4個、銀1個、銅3個。五輪は16年リオデジャネイロ大会で400メートル個人メドレー銅メダル。17年5月に飛び込み元日本代表の馬淵優佳と結婚。子どもは娘2人。174センチ、75キロ。


