男子グレコローマンスタイル60キロ級で東京五輪銀メダルの文田健一郎(ミキハウス)が23日の決勝に進み、五輪代表に決まった。3位以内を確定させ、日本協会の基準を満たした。
準決勝でアルメニア選手を5-1で下すと雄たけびを上げ、「(五輪切符を)取って帰らないとという気持ちが強かった」と安堵(あんど)した。
5月の練習中に不用意に俵投げをしかけ、左太ももを負傷した。「情けねえな…」。6月の明治杯全日本選抜選手権を欠場し、7月の世界選手権代表決定プレーオフで勝利して臨んだ舞台だった。
この日も患部への負担も考えてか、「投げてナンボ」の信念にこだわらず、スタンドで投げ技を無理に狙わず、組み手で圧力をかけて勝機を探った。寝技では得意の担ぎ技にこだわらず、ローリングで攻めた。
17年と19年に世界一となったが、東京五輪は2位。昨年の世界選手権も3位にとどまった。トップレベルでの紙一重の悔しい結果が続き、パリ五輪に向けて意識を変えてきた。豪快な投げ技にこだわらず「面白くない、見栄えが悪いでもいい。勝つことしか価値がない」。ケガを負ったからこそ、より徹した部分はあったのかもしれない。
「2人(妻と子ども)を胸を張って、パリの試合会場に連れて行けるのがすごくうれしい」。東京後に結婚し、子供も生まれた。今度は父として臨む舞台になる。「(決勝は)胸を借りる立場。思い切っていく」。世界王者として、堂々と雪辱の金メダルを取りに行く。