男子W杯バレーが30日に東京・代々木第1体育館で幕を開ける。パリ五輪予選として開催される今大会。7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)で銅メダルを獲得した日本代表(世界ランキング5位)は、開幕戦でフィンランド(同28位)と対する。女子代表が惜しくも逃した五輪本番前年の出場権獲得へ-。そのキーマンを「龍神の爪」と題して紹介する。
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ミドルブロッカー小野寺太志(27=サントリー)が、チームに安心感をもたらしている。VNLでは全試合でスタメン出場。攻守にわたる活躍で、世界大会46年ぶりのメダルとなる銅メダル獲得に貢献した。「大会を通してパフォーマンスの波があまりなかった。常に安定してプレーできていたことがよかった」と、充実の日々を振り返る。
心身の安定の裏には、家族の支えがある。昨年4月に結婚し、同9月に第1子となる男の子を授かった。海外遠征中の癒やしは、毎日30分のビデオ通話。「日本でずっと家族が応援してくれていた。本当にすくすく育ってくれていてうれしいし、記憶には残らないと思うんですけど、少しでも自慢できるようなことを残せればなって」と、息子の笑顔が原動力だ。
一家の大黒柱は、代表内では縁の下の力持ち的存在を担う。石川、高橋藍らアタッカー陣に注目が集まりがちだが、「僕は目立たなくていい」とさらりと言う。「我を出してうまくいった経験がないので。その方が気楽だし力も抜ける」。黒子を自身の立ち位置と受け止めている。
そんな性格は冷静なプレーに表れる。攻撃面での貢献も大きいが「自分に上がってこい」「打ちたい」と色気を出すことはないという。「(セッターの)関田さんに操ってもらっている感覚。常に選択肢の1つになることを考えている」と勝つための駒に徹する。初めての代表招集から8年。「僕のプレーが良かろうが悪かろうが、チームが勝てればそれでいい」。自分のプレーをないがしろにするわけではない。最優先は勝利。W杯バレーでも勝つための土台となる。【勝部晃多】