日本が、初めて、本場アメリカの選抜チームに勝った。2年連続の国内開催となる国際親善試合で、全日本選抜が米大学IVY(アイビー)リーグ選抜を10-5で破った。

日米両国で公式に組織されたアメフトの代表、選抜チーム同士の対戦で日本側が米国側に勝った例は過去1度もなかった。初めて勝利を収めた山本洋ヘッドコーチ(富士通)は「昨年は僅差の敗戦だった中、主将と一緒に方向性を話し合って、やはり勝負にこだわるところを、しっかりと。最後しんどい時間、苦しい時間帯ありましたけど、よく頑張ってくれた。日本にとって重要な1歩になったのではないかなと思います。次につなげていきたい」と意味をかみしめた。

言うまでもなく、米国発祥の競技。本場のプロリーグでバスケットボール、野球、アイスホッケーとともに数えられる米4大スポーツの中、唯一、日本人のNFLプレーヤーだけが誕生していない。その現実が示すように、これまで差があり過ぎた競技。1934年(昭9)に日本で初の公式戦が行われてから90年。歴史的1勝となった。

全日本選抜は、Xリーグを中心に60選手(外国籍と学生を含む)を集めた国内オールスター軍団。司令塔のクオーターバック(QB)は早稲田大(早大)卒の政本悠紀(IBM)が先発し、ランとパスを調律。第1クオーター(Q)開始5分、日本選手権ライスボウルMVPのRBサマジー・グラント(富士通)にボールを託し、先制タッチダウン(TD)を導いた。得点後のキックと合わせて7点をリードした。さらにK納所幸司(富士通)が51ヤードのFG(3点)を決めてリードを10点に広げた。

第2QにFGを返されて10-3で後半戦へ。一進一退の攻防を繰り広げた中、第3Qのラストプレーで聖地国立が沸く。米アイビー選抜に意地を見せられ、自陣残り1ヤードまで攻め込まれたが、相手の第4ダウンギャンブルとなるラン攻撃を全員で体を張って食い止めた。リードを死守して最終の第4Qへ突入した。

相手は、ハーバード大やエール大の超名門で構成される米大学ディビジョン1-FCS(1部下位)アイビーリーグの選抜チーム。学生、その4年生以上とはいえ、世界最強国の精鋭を相手に奮戦した。第4Qには自陣エンドゾーンでタックルされるセーフティーで2点を返された。しかし、攻撃の11人が敵陣に攻め込んで時間を消費し、守備の11人が出足の衰えぬ集散を繰り返して、守り抜き、勝利が決まった瞬間、国立の芝上で喜びを爆発させた。

昨年も第4Qまではリードしていた。快挙に迫っていたが、結果は逆転負け。その時に20-24のスコアから最後の望みを懸けた攻撃シリーズを任され、勝ち越し点を奪うことができなかったQB政本が、当時2番手からエースに成長して1年後にリベンジを遂げた。

日本が、アメリカに勝つ-。重かった扉を、90年間で1度も開かなかったドアを、初めて、こじ開けた。【木下淳】