<柔道:グランドスラム東京>◇2日目◇12日◇東京体育館◇男女5階級

 世界ランク1位の松本薫(23=フォーリーフジャパン)が、2010年を「完全制覇」した。ゴールデンスコア方式の延長にもつれた女子57キロ級の決勝は、平井希(24=自衛隊)を横四方固めに抑え込み一本勝ち。今年出場した国際試合のすべてに優勝した。男子は、この日行われた全3階級を日本勢が制した。

 松本が世界ランク1位の力を見せつけた。今年1月のワールドマスターズ水原から2月グランドスラム(GS)パリ、5月GSリオ、9月東京世界選手権、11月広州アジア大会、そして今大会。世界の大舞台で全勝を達成した。

 この日は立ち技のキレを欠き、1回戦から崩れ上四方固め、けさ固めと強引な固め技で接戦をものにした。決勝も延長にもつれ込み、最後は横四方固めでフィニッシュ。「決勝の平井さんとは初めて。自分の方が劣っていた。最後に抑えているときは『逃げないでくれ』と思っていました」と振り返った。

 今年最後を飾る栄冠も、松本にとっては当たり前。それより寝技に頼ったことが不満だった。優勝について「普通です。減量がないし延長になったら体力に自信がある。だけど、内容が全然駄目。喜びより反省が多いです」と口にした。

 世界選手権で男女通算100個目の金メダルを獲得した。相手をつかんで振り回す柔道が強烈な印象を与え、街でも声を掛けられるようになったが、子供たちから「柔道女」と呼ばれたという。

 12年ロンドン五輪へ向けて、ライバルたちから標的にされる。連戦続きだが、精神的にも、体力的にも不安はない。「研究されても、試合の中で成長していけば勝ち続けられる。緊張感を保つため、普段でも試合のことを考えるようにしている」。生活から競技にどっぷりつかる、まさに「柔道女」だ。今年1年間の勝利を「どれも印象に残っていない」とクールに振り返るが、うれしかったのは「世界選手権に勝って、お父さんとお母さんが泣いていたとき」。勝負に生きる顔が一瞬、柔らかな表情になった。【小谷野俊哉】