<レスリング全日本選抜選手権>◇15日◇第1日◇東京・代々木第2体育館

 「新日の刺客」が初の世界切符をつかんだ。フリースタイル男子96キロ級で、新日本プロレスの親会社ブシロード所属の山口剛(24)が初優勝し、世界選手権(9月、ハンガリー)出場を決めた。アマチュアレスリング普及のために新日本が設立した「ブシロードクラブ」の第1号選手。初代監督のプロレスラー永田裕志(45)は、16年リオ五輪の金メダルを目標に掲げた。

 シングレットには「ブシロード」の文字。優勝後に永田監督とお決まりの敬礼ポーズで掲げたのは、棚橋弘至らの激励メッセージ入りの新日本プロレスTシャツ。プロの期待を胸に戦った山口が、圧勝劇で代表権をつかんだ。

 木下との決勝戦でもタックル2発に、最後はローリング。新ルールも苦にせず、1ピリオドで7-0のテクニカルフォール勝ち。昨年末の全日本選手権に続く優勝に「非常にうれしいです」。同監督は「国内に敵なし。次は世界だ!」とハッパをかけた。

 昨年の大会では1階級下の84キロ級。準優勝にも、所属1号選手になる逸材を探していた同監督の目に留まった。「あのスピードは素晴らしい。階級を上げれば戦える」。中津商高で高校4冠も、早大に進学して狙ったロンドン五輪出場はかなわず、留年していた時期。「競技をやめようかなと思っていた」。そんな時の誘いだった。

 1年後に確信は結果になり、本人も「体が慣れて84キロのころのスピードも戻ってきた」。1月4日の東京ドーム大会では永田のセコンドにつき、入場行進も経験。「通常はできないこと。良い経験です」と新日流で強さを磨く。

 世界の層が厚い男子重量級は苦戦が続く。五輪代表になるのすら険しい道だが、同監督は「日本人だって体つきが変わってきている。戦える。志は高くやってもらいたい」。横で山口も大きくうなずいた。

 激励シャツに書かれた「レインメーカー」オカダ・カズチカのメッセージは「勝利の雨が降るぜ!」。まずはハンガリーで歓喜の雨を降らす。【阿部健吾】 ◆山口剛(やまぐち・たけし)1989年(平元)4月4日、岐阜・中津川市生まれ。中津商高から本格的にレスリングを始め、高校4冠を達成。早大に進学後は、4年で主将を務めた。11年全日本学生84キロ級優勝。同年全日本同級3位、12年準優勝。179センチ。