【ナンディ(フィジー)7日=松本航】ラグビー日本代表(世界ランク11位)プロップ山本幸輝(28=ヤマハ発動機)が“一発回答”でワールドカップ(W杯)に生き残る。

パシフィック・ネーションズ杯(PNC)で8年ぶり優勝が懸かる同13位米国戦(10日、スバ)に向け、全体練習に参加。6月の宮崎合宿で左脚内側側副靱帯(じんたい)を痛め、今週合流した元気印が、W杯メンバー発表前最後の実戦でアピールする。

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気温26度の心地よい風に、鳥のさえずりが聞こえた宿舎テラス。穏やかな時間が流れる南太平洋のフィジーで、午前練習を終えた山本が語気を強めた。「自分が入って、よりエナジーを感じてもらいたい」。31人のW杯登録メンバー締め切りは9月2日。最初で最後となる実戦アピールの場に、懸ける思いは人一倍だ。

6月下旬の宮崎合宿で左脚を痛め、全治6週間の診断を受けた。経験豊富な稲垣を追う左プロップ争いから離脱し、その間には社会人2年目の三浦らが台頭。それでも焦らず、衰えやすい脚を重点的に鍛え上げた。PNCメンバー外の福岡・宗像合宿から唯一、追加招集され「下半身は前より安定した」と自信を抱く。

滋賀・八幡工時代にはU-17(17歳以下)近畿代表の合宿で、見ず知らずの大阪の同い年から「なぁ八幡、スクラム全部組んでや」と言われた。滋賀から出れば名前さえ呼ばれず、九州代表戦では1学年下で対面だった垣永(現サントリー)に完敗。グラウンド脇の小屋の陰で1人涙し、腹をくくった。近大4年の春に巡ってきたヤマハ発動機のトライアウト。死に物狂いで走った50メートル走は6秒8を記録し、清宮監督を「アスリートや!」と驚かせた。1日目の夜に「来るか?」と尋ねられ「絶対行きます」と即決。真っすぐな心と努力で今の自分がある。

代表では練習の締めを担当するムードーメーカー。これまでに5~6個のネタを考え、フィジーでも山本の周囲は常に明るい。運命の米国戦へ「セットプレー以外のスキル、タックルでしっかり見せたい」。夢は、自分の手でつかみとる。

◆山本幸輝(やまもと・こうき)1990年(平2)10月29日、滋賀・野洲市生まれ。小1から野球を始め、野洲中2年の終わりにラグビーへ転向。八幡工を経て近大。4年の最後にジュニアジャパン入り。13年にヤマハ発動機へ入社し、16年11月アルゼンチン戦で日本代表初キャップ。181センチ、118キロ。