ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で初の8強入りを目標に掲げる日本代表は5日夜、愛知・豊田スタジアムでサモアとの1次リーグ3戦目に臨む。サモアは南太平洋に浮かぶ人口約20万人の島国で、ラグビーが国技とされる。世界ランキング15位は日本の8位より格下だが、世界的にも一目置かれる存在だ。

この数日間でサモアの「おおらかさ」が見えた。前戦のスコットランド戦から一夜明け、再始動した1日。報道陣に発表されていた兵庫・淡路佐野公園での取材対応は、急きょ車で約30分の宿舎ホテルに変わった。急な予定変更で間に合ったのは2社4人。取材した先輩記者から「『ゴメン、ゴメン』と笑顔で謝られたよ。これも文化の違いだな」と報告を受けた。もちろん怒っていなかった。

日本戦前日の4日。試合会場で行われたサモアの最終調整は、メインスタンドをバックにした記念撮影から始まった。ほほえましい光景だった。繰り返すが同国にとって、ラグビーは「国技」。それは油断や、心の緩みではなく、素の姿なのだろう。記者会見で質問をすれば、マイクを運ぶ広報担当者が「アリガトウ」と片言の日本語でお礼を言ってくれる。新鮮だった。

サモアのもう1つの顔が見えたのは、試合2日前の3日だった。名古屋市内で行われたメンバー発表会見。出席した面々へ、公共施設でタトゥーを隠していることについて質問が出た。日本戦に先発するFBティム・ナナイウィリアムズ(30)が代表して答えた。

「サモア人として文化的に、タトゥーで自己表現をすることがある。これはストーリー。ただ、日本にいる時は敬意を示し、ルールを守ります。それをきちんと考えたい。シャツを着る、長袖を着る。サモア人としては、他の文化を尊重することも大事です」

愛称は「サモアの獣たち」を意味する「マヌ・サモア」。試合ではフィジカルを前面に押し出し、熱いプレーを見せる男たちによる、細やかな気配りだった。「ギャップ」という一言で片付けられない魅力が、そこにある。【松本航】