日本相撲協会は28日、九州場所(11月10日初日、福岡国際センター)の新番付を発表した。エジプト出身の大砂嵐(21=大嶽)が新入幕。初土俵から所要10場所での昇進は、年6場所制となった58年以降では常幸龍の9場所に次ぐスピード出世だ。外国出身力士としては最速となった。来年4月から東京国際大学(埼玉県川越市)で、日本の伝統や文化を学ぶことも決まった。

 相撲も日本語も成長の余地は果てしない。外国人としては大関琴欧洲らを抜く史上最速の新入幕。会見で大砂嵐は「速すぎです。もうちょっとゆっくりがいい。うれしいより、ちょっと緊張」。想像以上の出世に不安な気持ちもこぼした。

 十両を2場所で通過。ともに10勝だが「オレの相撲は80、90%パワー。それでは勝てない。腰をおろして突っ張って、まわしとって前に出る」と課題は自覚している。引き技や力任せの張り手などで星を伸ばした面もある。同席した大嶽親方(元十両大竜)からは「がむしゃらはいいけど、雑はダメ」と指摘された。

 言葉遣いも、会見中にダメ出しされた。「ゴール(横綱)はオレの夢」と話すと、即座に「オレではない、私」と教えの声。「オレ」のたびに何度も注意を受けた。「親方は先生、私はスチューデント(生徒)」と苦笑い。「言い続けないとすぐには直らない。普段の生活のことからうるさく言います」と師匠。今も外出は必ず許可を得てから。門限は午後10時。「彼女をつくる必要もない」との徹底ぶりだ。

 幕内力士として言葉だけでなく日本を熟知しなければならないことも分かっている。自ら願い出て、来春から東京国際大学で日本語や文化、歴史などを学ぶ講座を不定期で受講する。「今はあまり理解できないのでテレビも見ない。でももっと日本のことを知りたい。勉強は嫌いだけど、これは楽しみ。頑張る」。

 巡業で痛めた足首の状態が回復次第、幕内力士を求めて出稽古も予定している。未知への挑戦に向けた準備もがむしゃらに行く。【鎌田直秀】

 ◆大砂嵐金太郎(おおすなあらし・きんたろう)本名・アブデルラフマン・シャーラン。1992年2月10日、エジプト生まれ。16歳から相撲を始める。11年9月来日。12年春場所初土俵。同夏場所で序ノ口優勝。13年夏場所幕下優勝。得意は突き、押し、投げ。家族は両親と弟。189センチ、146キロ。