60年ぶりの40代幕内力士の挑戦が幕を開ける。大相撲秋場所(東京・両国国技館)は今日14日、初日を迎える。東前頭14枚目の旭天鵬(友綱)は13日、40歳の誕生日を迎えた。40代の幕内力士は54年秋場所の名寄岩以来、昭和以降5人目。年6場所制となった58年以降は史上初だ。73年ぶりの40代勝ち越しに挑む。国技館では土俵祭りが行われ、新大関豪栄道(28)らが参加したが、新関脇豪風(35)は体調不良で欠席した。

 ハッピーバースデーの大合唱で、ろうそくの火を吹き消す。「今日はいらんからな」と旭天鵬は周りに念を押して、笑顔で記念撮影。その瞬間、十両旭日松らがお約束のように誕生ケーキを顔面に押しつけた。瞬く間に真っ白と化した顔。「もったいないやろ!」。さけぶ40歳は笑っていた。後輩に慕われ、いじられる幕内最年長の姿だった。

 こだわっていた40歳幕内を迎えても、体調の変化は「まったくない」。この日もじっくり汗をかいた後、平成元年生まれの関取2人と13番取った。「汗をかくと落ち着くし、安心する」。若さの秘密は常に同じ。「食べたいときに食べて、飲みたいときに飲む。後輩に交ざって一緒にやるのがいい」。後輩以上にはしゃぐから、若手に慕われる。

 40代で幕内で勝ち越した力士は35年夏場所の能代潟と、41年夏場所の藤ノ里2回だけ。通算900勝へもあと13に迫る。「次は40歳での勝ち越しと900勝。41歳までまわしをつけて、また誕生日を祝ってもらうのが夢だね。最年長へ?

 そこまで行くわ」。番付は十両がちらつくが、視線は前だけ。「不惑」を迎えた角界の“レジェンド”に、惑いはない。【今村健人】