振り込め詐欺に使う通帳をつくることを拒んだ男子大学生(19)から現金250万円を脅し取ろうとしたとして、兵庫県警明石署は5日、関西大商学部4年で野球部員の栗岡裕幸容疑者(21)を恐喝未遂の疑いで逮捕した。栗岡容疑者は「振り込め詐欺に使うため、何回か通帳を集めたことがある」と供述。通帳をつくると報酬は5万円だった。明石署は背後に振り込め詐欺グループがいるとみて調べている。

 明石署によると、栗岡容疑者は大阪商業大3年秋谷浩樹容疑者(20)と同2年の少年(19=いずれも恐喝未遂容疑で逮捕)と共謀。7月22日夜、兵庫県明石市の路上で「金を出せ。250万用意できなかったら拉致するぞ」と被害者の学生を脅した疑い。

 被害者も大商大生で6月、少年に「いいアルバイトを紹介して」と頼んだところ、報酬5万円で通帳の売買を持ち掛けられたという。振り込め詐欺に使われると思った被害者は怖くなり拒んでいたところ、呼び出され、脅迫された。脅迫直後に逃げて駅員に助けを求め、事件が発覚した。

 栗岡容疑者は滝川二高(神戸市)を卒業しており、秋谷容疑者は同校野球部の後輩。事件前に秋谷容疑者が「先輩、何とかしてくださいよ。お願いします」と拒否する学生への“脅迫”を頼むと、栗岡容疑者は「わしが言うたる!」と請け負ったという。

 秋谷容疑者と少年、被害者は同じ大商大に通い、ホスト仲間。少年はすでに通帳を作り、アルバイト料を受け取っていたという。

 調べに対し栗岡容疑者は「振り込め詐欺に使うため、何回か通帳を集めたことがある」と供述。また事実関係はほぼ認めているが「恐喝に当たるとは思わなかった」としている。明石署は栗岡容疑者が事件を主導、同容疑者の背景に振り込め詐欺グループがいるとみて、捜査している。

 栗岡容疑者の逮捕を受け、関大の土佐秀夫野球部監督らが大阪・吹田の大学で会見した。土佐監督は「まさか、このような事件を起こすとは…。伝統ある野球部に傷をつけ、先輩方に申し訳ない」と頭を下げた。同容疑者は兵庫・滝川二で主将を務め、指定推薦校枠で入学。3年春に外野手で7試合に出場したが、同夏に右肩を痛めてから出場機会がなかった。

 学内で合宿中だった同部は、この日から活動を自粛。部の公式ホームページも臨時閉鎖された。河田悌一学長は「個人の問題なのか、より広がりのある問題なのかで判断が変わってくる。捜査状況を見守って厳正に対処したい」と話した。

 ◆関大野球部

 1915年(大正4)創部。関西学生野球連盟に所属し、通算33度のリーグ戦優勝を誇る。主なOBには故村山実氏、上田利治氏がおり、現役のプロ野球選手では阪神の岩田稔投手がいる。