教え方も「プロ」だった。12月は野球教室を取材する機会が多かった。ごく当たり前のことを、説得力を持たせて訴えかける。ヤクルト捕手の中村悠平(26)は「あきらめない気持ち」を、こう表現した。

 「サッカーは90分で終わりだけど、野球は3アウト取らないと終わらない。0-100で負けていても、逆転するかもしれない。捕手は1人だけ向きが違うポジションで、みんなに見られている。試合が終わるまで元気に声を出そう」。

 確かに、時間の制限も得点の上限もないスポーツは珍しい。ただ単に「最後まであきらめるな」と言われるのとは違う。試合中になぜ声を出すのか、中村の言葉を聞いた少年たちは納得しただろう。別の野球教室では、由規が投手に独特のアドバイスをしていた。

 「ストライクは、入れようと思うほど入らない。バッターは、打席に立ったら打ちたい。困ったときこそ、思い切り腕を振って投げよう。ボール球でも振ってくれるから」

 共通するのは「相手の立場になって考えてみよう」ということ。伝え方ひとつで、受け止め方は変わる。野球の技術だけではない、大切なメッセージを伝えていた。【ヤクルト担当・鹿野雄太】

ヤクルト由規
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