その日、二塁上にこんもりと盛り塩がされた。27日のヤクルト対巨人戦。山形の荘内銀行・日新製薬スタジアムやまがたで見慣れない光景があった。試合前の練習で二塁のど真ん中に白い山が作られた。一体、なぜ? 答えは大松尚逸内野手(35)が持っていた。「そういう事ですよ」と苦笑いを浮かべながら、説明してくれた。

 約1年前の5月29日、大松は同球場にいた。まだロッテのユニホームを着て、2軍で楽天と対戦していた。悲劇はいきなり起こった。走塁で一塁から二塁を踏んだ瞬間、右足がはじけた。

 「ベースが堅くて、端を踏んで足がグニってなるのが怖かった。だからど真ん中を踏んだら、切れたんです」。右アキレスけんが断裂した。そこから手術を行い、リハビリするもロッテからは戦力外通告を受けた。

 だが、17年2月。テストを受けてヤクルトへの入団が決まった。ユニホームは変わったが、再び同じ球場でプレーすることができた。再発しないようにと願を懸けた白い山を見ながら「あのケガがあったから今がある。違うユニホームとはいえ、1軍で同じ球場でできる。その思いを持ってやりたい」としみじみ語った。山あり谷ありの1年。野球ができる喜びをかみしめる盛り塩だった。【ヤクルト担当 島根純】