日本ハム元オーナーの大社啓二氏(63)が、伝統球団にとって激動の時代となった平成を振り返ります。

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日本ハムは北の大地で着実に根を伸ばしてきた。10年ぶり3度目の日本一に輝いた2016年(平28)には、シーズンの観客動員数が移転後初めて200万人を突破した。企業理念として、スポーツと生活が近くにある社会「Sports Community」を掲げてきた北海道での歩みを、大社啓二は感慨深く振り返る。

大社 地域社会と共生するという姿勢を、球団が見せるかどうか。大事なことは、行くことではなく、行って何をするか、です。そして地域に受け入れられるか。パ・リーグ球団の1つの形を、お見せすることができたのかなと思います。

移転1年目の04年に起きた球界再編問題も、今は好意的に捉えている。

大社 ある意味、新しいものが生みだされる前のカオス状態だったと思います。セ・リーグも含めて危機感の表れだったんでしょうね。混沌(こんとん)とした時代から、各球団がビジネスとしてどう進んでいくべきかという転換期だったと思います。

球界の大きなうねりの中で、日本ハムは進むべき新たな道を開拓してきた。大社は16年3月にオーナー代行を退いてからも非常勤の取締役として球団、そして球界を見続けている。新たな時代へ向かう球界を、今はどう見ているのか。

大社 野球の本質が変わらなければいいなと思っています。例えば一部のスポーツではテレビ放送のサイズに競技を合わせています。野球も試合時間の長さが1つの課題ですが、それが理由でお客さんも入らない、テレビにも向かないとなって日本の野球は7回制になりました、となってしまえば野球の面白みが違った意味でそがれてしまいます。球界全体で“野球の楽しみ”は大事にされた方がいいと思います。

地域社会との共生、そして世界の中で日本のプロ野球の価値を上げていくことが、球団経営の視点でも広告宣伝からビッグビジネスへ転化していくポイントとみている。

大社 球場にいつもいっぱいのお客さんが入って、もうかっていればいいやという、球場に足を運ぶお客様の顔だけを見ていたら野球の発展はないと思います。かつて大阪にあった藤井寺球場、東京では東京球場ではナイター公害、騒音公害でプロ野球の興行ができなくなりました。球場の中は盛り上がっている、でも社会から見たら邪魔な存在、いらない存在というのは起こり得ることです。ビジネスで考えると、収入のコアになるものは試合であり、その価値を上げて世界中で放送権を獲得できるようになるかだと思います。いかに海外の人たちが見たくなる試合を提供できるか。それが日本の野球の経済的な発展、ビジネスの成功にもつながると思います。(敬称略=この項おわり)【寺尾博和、木下大輔】