ドライチ-。チーム、ファンが抱く期待は大きい。それだけの素材だ。特に大学、社会人からの入団となると即戦力として見る傾向が強い。大学通算16発。日本代表の4番を務めた注目の新人。知名度の高い選手には避けて通れない厳しい道がある。のし掛かる重圧はプレッシャーにもなる。今、その真っ只中で大役を背負って頑張っているのは阪神大山悠輔内野手(22)だ。181センチ、85キロ。右投げ、右打ちの白鴎大出にスポットを当ててみた。

 キャンプは1軍スタートだった。沖縄で主力選手と一緒に練習をした。当然のことながらプロとアマの力の差を痛感した。現在はファーム。連日鳴尾浜球場で体力、技術の両面にわたって野球に取り組んでいる。すでに、公式戦ではウエスタン・リーグの全チームと対戦した。4月10日現在の成績は13試合に出場。39打数8安打4打点、打率・205。右の大砲だが、ホームランはまだ出ていない。

 まずは、掛布監督の見た目から現状を想像していただこう。「遠くへ飛ばすパワーはありますし、いい雰囲気を持った選手ですよ。今は、まだフォームなどは小さいことしか注意していません。ほとんどさわっていない状態ですが、しばらくはこのままやっていく予定です。体力を含め、体を大きくすることなど、技術面以外でもやることはたくさんありますが、まずは実戦を少しでも多く経験させたいと思っています。今、サードで起用していますが、もう1人の陽川は他のポジションも経験して、守りの幅を広げれば1軍での出場機会は多くなりますし、大山は慣れたポジションでなるべくプレッシャーがかからないようにと思っています」である。少々時間はかかりそうだ。

 そうだ。こんな話を思い出した。昨年のキャンプを終了した頃だった。同監督が見た新人高山を「素晴らしい選手。彼の場合、何にもしないで放っといても大丈夫でしょう」の評価をしていたが、今年のドラ1大山は「オールスターまでには何とかしたいですね」だった。力の差が非常にわかりやすい話。努力あるのみで、伸びしろは十分の大山に期待したいが、掛布監督同様、OBとして私も気になるのは成長。そっとして、プレッシャーをかけずに待つことにする。

 気になるのは冒頭に明記した新人の「避けては通れない道」だろう。幾つかの実例を見てきた。球界のOB諸氏、親切心からに違いないが、自分の体験や技術的な持論を事細かく丁寧にアドバイスしてくれる。ルーキーだ。気持ちが純粋であるがゆえに諸先輩達の話はむげにできず、すべてを吸収すべく聞き入る。ありがたいことだが、その数は半端でない。あまりにも多すぎて自分の中で消化できないほどに膨れあがる。迷ったら負けだ。どうすべきか。練習に没頭することだ。邪念を捨てて練習に打ち込むしかない。そして、少しでも早く、しっかりした自分を作りあげることだ。プレッシャーは自分ではねのけるしかない。ただ、諸先輩方の教えが大ヒントとなってデビューする場合がある。邪魔になる方が多いものの、一概に迷惑とはいえないだけに厄介だ。

 大山は「この世界、だいぶ慣れてはきましたが、逆にやる事がいっぱいあるのもわかってきました。自分でテーマを決めて選んでいくべきだと思いますが、現状は部分的に鍛えていけばいい、というものではなく技術面、体力面、状況判断などすべてをレベルアップしていかないとダメだと思っています。今は、ゲームに出していただいていますし、実戦でいろいろなことを体験して、1つ1つのプレーをどん欲に吸収していきたいです。練習あるのみです」とやる気満々。

 現在、食事をじっくり時間をかけて、たくさん食べて体を大きくすることにも挑戦している。私がフロントにいる時の井川慶(2003年のMVP)がそうだった。最近では北條が実行。体をひと回り大きくして1軍デビューを果たした。プレッシャー。己の力ではねのけることが中心選手への道なのだ。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)