オリックスが開幕ダッシュに失敗し最下位に低迷している。球団は28日、早くも3度目となるコーチ陣の配置換えを行った。開幕してまだ1カ月余り。投打ともに精彩を欠いているが巻き返し策はあるのか-。かつてオリックスの投手コーチを務めた西本聖氏(日刊スポーツ評論家)に話を聞いた。

 -投手コーチの持ち場変更、1、2軍(育成担当)入れ替えに続き、今度はバッテリーコーチを入れ替えた。一連の配置転換は現場トップである福良監督の意向というより球団の主導で行われた

 西本氏 厳しい言い方をするけど、こういうことが続くとどんどん信頼関係がなくなっていくんじゃないかな。球団、ベンチ、選手の間に不信感が生まれてくる。キャンプから「チーム一丸となって優勝を目指すんだ」とどの球団もスタートしている。これがシーズン後半だったら分かる。でも、まだ1カ月でしょう。最下位だから仕方なく配置転換する。まあ、それも一つの打開策だとは思うけど、1カ月しか経っていない状況の中でどうなのかなと。一般社会だって同じ。上司がコロコロ変わったら、会社に対して不信感が募るはず。「うちの会社、大丈夫なのかな」って。

 【オリックスの配置転換】

 4月13日に1軍投手コーチのベンチ担当だった酒井勉コーチ(52)がブルペン担当となり、小林宏コーチ(45)がブルペンからベンチに変更。また17日には、ブルペン担当に変更されたばかりの酒井コーチが育成コーチ(2軍)となり、育成コーチの星野伸之コーチ(50)が1軍ブルペン担当となった。そして28日、バッテリーコーチの配置転換を発表。三輪隆1軍コーチ(46)が育成コーチとなり、鈴木郁洋育成コーチ(40)と入れ替えた。横田昭作球団副本部長は「開幕してからバッテリー部門がうまくいかない部分があった。(捕手が)窮屈なリードになっているし、四球も多い。鈴木コーチは(昨年)1軍の経験もあるので」と説明。

 -今季のオリックスは開幕からエース金子が健在で、西本さんもソフトバンクに次ぐ評価をしていた。しかし開幕したらチーム防御率が4・99とリーグワースト。最下位(9勝15敗)に低迷している(4月28日現在)

 西本氏 最初の躓きは開幕2戦目(3月26日の西武戦、5-9で逆転負け)だと思う。初回に5点を取ったけど、先発のルーキー近藤大が右肩の違和感か何かで3回で降板。2番手のルーキー赤間がストライクが入らなくて(4四死球で4失点)負けていった。私が思ったのは、2戦目はディクソンが行かないといけない。開幕2戦目で相手も良い投手が来るからということで近藤大にしたんだろうけど、それは違うと思う。何年か前(13年)にも同じ事があった。楽天のマー君にエース金子をぶつけなかった。それで24連勝を許してしまったと私は思っている。エースの登板試合というのはチームの士気が高まるもの。負けても野手は納得するし勝てば3連戦3連勝の可能性だってある。それを相手がエースだからといってエースをぶつけないのであれば「捨てゲームにしているんだ」と選手は思ってしまう。2番手も赤間ではなく岸田とか勝ちゲームの投手を使わないといけなかった。それとコーディエを抑えとして決めたのならば、もう少し我慢して使ってほしかった。

 -26日のソフトバンク戦では10四死球。四死球の多さも目立つ

 西本氏 調べてみたら多い。四球を124個も出している。12球団で一番少ないソフトバンクとDeNAが64個。倍近くもあった。(4月28日現在)

 -原因は?

 西本氏 四球というのはピッチャーのミス。打者に無条件で塁を与えてしまう。打たれたくないという思いからコースを狙う、外れて四球を出す、ピンチが広がっていく、余計に力むという悪循環。ベンチや守っている野手からは逃げている姿にしか見えない。私も現役時代、四球を出しては長嶋監督に怒られた。「逃げるな!」と激しく叱責された。しかも四球というのは何も得るものがない。打たれても、打たれることによって分かることがある。次はここに投げようとか、得るものがある。でも四球って何も残らないんですよ。

 -どうすれば改善されるか

 西本氏 ミーティングの方法を変えてみるのも一つの手。困ったら一番自信のあるボールを投げる。困ったときは裏をかくより自分が信じられるボールを投げるとか、ミーティングでしっかり話し合うことが大事。ほかには、真ん中付近でいいからしっかりストライクを投げていこうと徹底することも必要。甘くてもいいから自信のあるボールを投げようよ、と。選手の話を聞いて意思統一すれば投手も安心できる。

 -まだシーズンは100試合以上残っている

 西本氏 チームが一つになることが大事。フロント、ベンチ、選手が信頼し合うこと。今のままでは、球団や監督がコーチ、選手に責任をなすりつけているように思われてしまう。「現場の責任は監督が取る」と言われるし私もそう思う。球団も現場に託すことも必要なのでないか。球団は、チームが一つになって戦える環境をつくってあげることが大事だと思う。

 ◆西本聖(にしもと・たかし) 1956年(昭31)6月27日生まれ、愛媛県出身。松山商から74年ドラフト外で巨人入り。2年目に1軍入りを果たすと77年に8勝を挙げ、80年からは6年連続で2桁勝利をマークするなど巨人の主力投手として活躍した。81年に沢村賞。中日に移籍した89年には20勝を挙げ最多勝。その後オリックスでもプレー。最後は94年、巨人で現役引退した。通算504試合に登板し165勝128敗17セーブ、防御率3・20。引退後は阪神、ロッテ、オリックス、韓国ハンファで投手コーチを務めた。今季から日刊スポーツ評論家に復帰。