元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。15回目は「交流戦勝手に通信簿」のセ・リーグ編です。攻撃面とディフェンス面に分けて、4段階評価(◎非常に優秀、○優秀、△もう少し、×改善急務)します。


【3位 広島=攻撃面◎、ディフェンス面○】

 勝率1位のソフトバンクに3連戦で1勝1敗1分け、唯一負け越さなかったことをまず評価したい。昨年までの交流戦通算成績は11位だったが、今季は3位とジャンプアップ。打撃から見る。61得点(12球団中8位)15本塁打(同3位)20盗塁(同1位)打率2割4分9厘(7位)と“お家芸”の盗塁数(走力)はさすが。だが、打率、得点などは目を見張る数字でもない。好成績の要因は、足を絡めた作戦で少ないチャンスをものにしてきた結果ではないかと思う。

 印象深いのは14日の西武戦。史上初となるコリジョン適用のサヨナラ劇となった。試合後のコメントで緒方監督もコリジョン導入で、足のある広島に有利に働くと想定。春季キャンプから走塁を重視し、選手の利き足まで調べる念の入れようで、捕手のタッチをかいくぐるスライディング練習など徹底してきた。地道な努力が実を結んだ1勝で、走塁意識の高さが呼んだサヨナラ勝ちだった。

 交流戦滑り出しはパの難敵ロッテ(1勝2敗)ソフトバンク(1勝1敗1分け)と続き、つまずき感はあったが、西武、オリックス戦の6連勝で突き抜けた。15本塁打(同3位)も多い。鈴木誠也の3試合連続V弾は強烈。足を絡めて1発で試合をものにし勢いも出てきた。

 ディフェンス面では、57失点(同5位)防御率3・06(同6位)とまずまず。目立ったのは、ジャクソン、へーゲンスの助っ人中継ぎの安定感だ。へーゲンスは10試合に登板し1勝1敗6ホールド、防御率1・58。ジャクソンも9試合に登板し2勝5ホールド、防御率2・53と勝利に貢献できている数字だ。

 不安材料は、エルドレッドの負傷離脱。しかし、16日から復帰したルナが交流戦最後の4試合で打率3割1分3厘。エルドレッドの穴を埋めてくれれば25年ぶりのリーグ優勝も現実味を帯びてくる。


◇ここから下は失点が得点を上回ったチーム◇


【7位 巨人=攻撃面○、ディフェンス面×】

 ディフェンス面の改善が急務だ。78失点(同11位)11失策(同9位)防御率4・18(同11位)は悪すぎる。とはいえ、交流戦9勝9敗の勝率5割はセ2位。5連勝、5連敗と大波小波があったものの、交流戦は同一リーグで何位かが大事。何だかんだ言いながら踏みとどまった印象だ。失策数の多さもさることながら、菅野以外の先発投手に安定感がない。マイコラス復帰のニュースは好材料。防御率4点台を超えたのは巨人とヤクルトだけ。投手陣の整備が最優先課題となる。

 攻撃面では阿部復帰で打線に厚みが出たのは言うまでもない。負傷者の早期復帰が優勝に不可欠。64得点(同7位)13本塁打(同5位)5盗塁(同12位)打率2割6分2厘(同5位)の攻撃項目をみると盗塁が最下位。足を絡めて得点できていないため、得点力が低い点も気になる。

【8位 中日=攻撃面×、ディフェンス面◎】

 49失点はソフトバンクに1点届かず12球団2位でセ1位。防御率2・31(同1位)と投手力はすばらしい。

 しかし、打てなければ話にならない。46得点(同11位)12本塁打(同7位)8盗塁(9位)打率1割9分5厘(同12位)。打率が2割に届かない球団は中日だけ。投手は最少失点でいかねば負けるという重圧がかかる。開幕から手の付けられなかったビシエドのバットが“梅雨入り”したことが痛い。主砲のバットが湿るとともにチーム順位にも反映。交流戦前まで3割9厘あったビシエドの打率が現在2割7分6厘。交流戦打率は1割8分2厘とブレーキだった。ナニータも交流戦1割9分4厘。パ・リーグの投手が良すぎたせいか? リーグ戦再開で2人の打撃復活に期待は大きい。

 バットがだめなら機動力、といきたいが、足の速い大島も交流戦打率2割4分3厘。走者が塁上に出ないと作戦は立てられない。ベンチも打つ手が限られるだけに谷繁監督も頭が痛いところ。とはいえ12球団1、2位を誇る投手力がある。攻撃面の改善さえできれば上位進出の芽は十分にある。

【9位 DeNA=攻撃面△、ディフェンス面△】

 序盤の勢いに陰りが出てきた。ロペスの離脱が痛い。60得点(同9位)13本塁打(同5位)8盗塁(同9位)打率2割4分5厘(同8位)。交流戦前に補強したエリアン内野手も打率1割9分と慣れるまでには時間がかかりそうな気配。選手層が薄いだけに上位進出の鍵は主力がそろえば、が最低条件。ロペスの早期復帰が待たれる。

【10位 阪神=攻撃面×、ディフェンス面△】

 72失点(同9位)9失策(同7位)防御率3・85(同9位)。ディフェンス項目のすべてが下から数えたほうが早い状況。メッセンジャーが交流戦3試合2勝1敗、防御率0・82と藤浪は3試合1勝1敗、防御率1・96と奮闘も後ろが続かない。6回以降の逆転勝ち、逆転負け(5回時で同点の試合除く、6回以降逆転の逆転となった試合は除く)を調べて見ると、逆転負け2敗と中継ぎ以降に不安があり、接戦で勝ちきれない。また打線が本調子からは程遠い状況で、投手に勝ち星がつきにくい状況となっている。

 攻撃面を見る。44得点(同12位)3本塁打(同12位)9盗塁(同8位)打率2割2分3厘(同11位)。足技にしても鳥谷が交流戦序盤で4個を記録したものの、ほかに足が使えそうな高山2個、大和1個、西岡ゼロ、横田ゼロといった具合で、相手の脅威となっていない。中日同様、塁に出ないため作戦も立てようがないという悪循環だ。バント失敗も目についた。練習次第ではミスを減らせるバントだが、小技でミスしているようでは貧打線で勝てるはずがない。再度、足、バントなど基本動作をしっかり見直す必要があるようだ。

【11位 ヤクルト=攻撃面◎、ディフェンス面×】

 打撃成績は12球団トップクラスでその破壊力は色あせていない。84得点(同2位)14本塁打(同4位)11盗塁(同6位)打率2割7分5厘(同2位)と数字が示す通り。見ている限りここ3年間、打線はすばらしい。しかし6勝12敗に終わった。

 ディフェンス面で失策は5個(同2位)で問題なしだが、投手力が弱い。104失点(同12位)防御率5・90(同12位)はぶっちぎって悪い。いくら強力打線でも、相手に点を取られ放題では、どこまでいっても勝てない。昨年はロマン、バーネットでリリーフ陣が盤石だったが今年はいない。中継ぎ3枚の方程式が崩れたことで、先発を引っ張らねばならない。しかし、先発もライアン小川の防御率4・95が12球団38位。勝ちが計算できる先発もいない状況となった。先発、中継ぎ含め投手陣の整備が課題となる。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)