元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。41回目は「好調楽天、初の最高勝率1位なるか!交流戦見どころ」です。

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 交流戦過去12年間でパ・リーグが11回勝ち越し。1回しか勝ち越したことのないセ・リーグがどこまで勝ちきれるか注目だ。

 07年には日本ハムが開幕から低迷したが、リーグ戦から交流戦にかけて14連勝を記録するなどV字回復し、リーグ優勝を果たした。いっぽう、15年にはDeNAが首位で交流戦に突入しながら大失速。10連敗するなど3勝14敗1分け、勝率1割7分6厘は交流戦ワースト記録となり、シーズンも最下位で終えてしまった。18試合されど18試合。日本ハム、DeNAの例をみても分かる通り、交流戦の成績次第では、ガラッと順位が変わる可能性がある。1人勝ちも1人負けもあり、それもまた見どころ。

 昨年、セで貯金を作ったのは広島のみ(11勝6敗1分け)で、巨人が5割。交流戦を機に広島がセの他球団を徐々に引き離していった。

 交流戦の最高勝率1位ラインはズバリ13勝5敗、当然だが最初のカードが大事だ。個人的に注目は、阪神対ロッテ。序盤好スタートをきった阪神だが、直近は勢いにかげりが感じられる。対するロッテはパ・リーグ最下位に沈んでいるものの25~27日の3連勝もあり上向き気配だ。阪神がロッテに負け越すようなら、交流戦終えた時点で最悪Bクラスも懸念される。ロッテは過去2回の勝率1位もあり、相性の良い交流戦で阪神に勝ち越して浮上のきっかけをつかみたい。ロッテは交流戦で沈むようなら、本当にシーズン終わってしまう。

 交流戦は白紙の状態でスタートできる。滑り出しでつまずいたロッテも、中日も交流戦過去の通算勝率では、ロッテが2位(・556)、中日が5位(・507)とデータは悪くない。奮起に期待したい。

 交流戦で勝利の鍵となるのはDHの使い方だろう。特に広島、阪神、巨人は交流戦がプラスに働く可能性は大きい。

 広島はエルドレッド、松山、新井をDHで起用でき破壊力が増す。うまく回れば貯金も作れる。投手力ではジョンソンが戻ってくればなおさら大きい。

 阪神は福留をDH起用し、守りの負荷を軽減できる。セ方式なら休みだったところ、福留の打撃は生かしたまま伸び盛りの中谷も使えるとなれば猛虎打線がさらに厚みを増す。

 巨人は村田を起用できる。村田にとっては存在価値をアピールできるチャンス。ここで村田が評価を上げれば、交流戦後でも阿部の調子が落ちてきた場合にスタメンを奪う可能性もある。また阿部の休養日に村田を一塁手に起用するプランも出てくるだろう。セで唯一の勝率1位経験2度を誇る巨人だが、村田が意地を見せるか注目だ。また亀井を起用できるのも大きい。投手陣では山口俊が復帰できるかにも期待がかかるだろう。

 パ・リーグの楽天はいきなり巨人戦でうまく立ち回れば交流戦がいい展開になるだろう。過去3年の交流戦は14~16年まで9位、4位、4位ともう一息だ。過去に最高勝率1位の経験もないだけに序盤の勢いをどこまで持続できるか。昨年のパは5球団が6位位以内、オリックスの1人負け(12位)だった。取りこぼしは許されない。

 パが12年間で11回勝ち越しているのは何か。目標設定の高さにあると思う。パ球団は勝率1位でいくぞと考えている。私の現役時代、ロッテのチームメートもそう思っていた。28日の試合後、楽天梨田監督、ソフトバンク工藤監督は「最高勝率1位」を公言した。セは“5割いけば”と思っているチームがあるとすれば、良くて5割しかいかない。目標設定とモチベーションの高いパにまた食われてしまう。

 パで勝率1位経験のないのは西武と楽天のみ。6回の勝率1位を誇るソフトバンクを押しのけ、楽天は梨田監督の公言通り同1位の座を獲得できるか見どころだ。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)