開幕から3カードを消化した。チームとしての成績は4勝5敗とひとつの負け越し。昨年はといえば9試合が終わって5勝3敗1分け。さほど変わりはない。状態が悪い中、この成績で収まっているわけだから、スタートとしてはまずまず…といったところではないか。

スポーツ新聞のリーグ打撃表を見直した。規定打席に足りているバッターの中、下から2番目のところに、その名前があった。佐藤輝だ。印象の強い2発を放っているから、イメージ的にはもっと打っているように映っていたが、数字は正直。打率は1割4分7厘、まだ5安打しか記録していない。

細かい数字を見た。9試合で喫した三振は11。両リーグで早くも2桁三振に乗せたのは3人。ロッテのソト(12個)と、阪神の大山(13個)と佐藤輝。大山が最も多いというのは意外だったが、佐藤輝に関しては、それほどの驚きはない。

先のヤクルト戦で2試合連続の価値ある本塁打を放ち、これで好調期に入るか…と予感させた途端、7日の3戦目。2三振と守りで痛いミスを犯して、敗戦の矢面に立つことになった。

この日、4打席で2三振と一塁ゴロが2度。いい当たりもあったけど、とにかく打ちたい、打ちたいの気持ちが先走り、ボール球に手を出すシーンが何度も見えた。特に低めのボール球を振り、打球は上がらない。内容と結果がストレートに出た4打席だった。

なんでもかんでも打ちにいく。どんなボールでも手を出す。昔から、そんな打撃を「ダボハゼ」のように、と表現されてきた。なんでもがっつくという意味で、これが下降線への入り口になる。佐藤輝とはタイプは違うが、左打者の先輩、掛布雅之は現役時代、ダボハゼ回避として、我慢とどっしりした落ち着きを自らに課した。「そりゃ人間だもん。いい状態の時は、どんな球でも打てると思っちゃう。それが徐々に響いてくる。調子の良さは、ボール球に手を出すことで消えていき、自分で自分を崩すことになる」。掛布も悩んだ時期はあった。

神宮の2戦連発を振り返ればわかる。2本ともどっしりと構え、甘めの球を仕留めたもの。待っていたら、必ず甘い球がくる。それを打ち損じなく仕留める。「それをボール球に手を出すことで、自分の良さは薄らいでいく」。野球とは、バッティングとは、そういうものだ…と掛布は昔からつぶやいていた。

5番から6番に打順は変わった。クリーンアップから外れても、これほど注目される6番打者はなかなかいない。好不調の波というか、スパンがまったく読めない佐藤輝だが、打撃の状態は、彼の場合、守備にも影響しているように映る。3戦目の失策。失点に結び付いたミスに「集中力が欠けている」と担当コーチは言い放った。とにかく、何もかもが目立つ存在で、時に損なタイプと同情したくもなるけど、早く打席でのどっしり感を出してもらいたい。必ず甘いボールはくる。【内匠宏幸】(敬称略)

ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト2死二塁、オスナの打球を後逸する佐藤輝(2024年4月7日撮影)
ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト2死二塁、オスナの打球を後逸する佐藤輝(2024年4月7日撮影)