3月19日のセンバツ開幕まで約1カ月となった。春の日本一を目指して練習する球児もいれば、真夏の聖地を目指して頑張っている球児たちもいる。甲子園で春夏通算3度の優勝を誇る強豪・帝京(東東京)も盛夏の甲子園へ向け、日々練習に励む。このたび、東京・板橋区にある同校野球部のグラウンドが全面人工芝に生まれ変わった。以前は内野が土だったが、ホコリの対策や、体育の授業でも使用する点などから全面人工芝になった。昨年12月1日に着工し、年明け1月25日に工事を終えた。

 費用は明かされなかったが、神宮球場のものより強度の強い人工芝で、温度も上がりにくいものを使用しているそう。当然、雨に悩まされることも減る。前田三夫監督(67)は「これまでより練習の回数が増えるかもしれない」とにんまりだ。一変したこのグラウンドは変わった形をしている。校舎が外野の壁に沿うように湾曲して建てられているのだ。一般生徒は廊下に出れば、野球部員の練習風景が見える。真新しい人工芝に刻まれた「Teikyo」の文字も、校舎に向けて描かれている。校舎がグラウンドを包み込むような作りを見るたび、野球部は学校の「誇り」なのだなと感じる。

 昨夏に比べ、選手たちの体はひと回り大きくなった。前田監督は「12、1月とグラウンドが使えなかった分、下半身強化に努めた。特に投手はその分、ボールが良くなったね。今年は6、7枚投手がいる。そこは(昨夏より)レベルアップしているかな。内野から捕手へのコンバートも考えているよ」と言った。高校時代の阪神原口を始め、これまでもコンバートを成功させてきた。今年も何やら考えがあるようだ。

 取材した日、監督自ら外野ノックを打っていた。今でも週に数回ジムに通って鍛えている。「練習を見ているだけになっちゃったら、つまらないよ」と指揮官は豪快に笑った。イレギュラーバウンドの練習や、グラウンド整備のやり方を教えるため、時々土のグラウンドも借りて練習していくそうだ。「野球部の居心地が良すぎるのは良くない。それは、ただの現状維持。もっと欲を持って厳しくやらないと。こんなにいいグラウンドを作ってもらったし頑張らないとね」。新しくなった帝京グラウンドで、11年夏以来の甲子園へ向けた練習が今日も行われている。【和田美保】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

外野ノックを打つ帝京・前田監督(撮影・和田美保)
外野ノックを打つ帝京・前田監督(撮影・和田美保)
外野ノックの最中、注意する帝京・前田監督(撮影・和田美保)
外野ノックの最中、注意する帝京・前田監督(撮影・和田美保)
全面人工芝に生まれ変わった帝京高校のグラウンド(撮影・和田美保)
全面人工芝に生まれ変わった帝京高校のグラウンド(撮影・和田美保)