指揮官・岡田彰布は正直な人である。「オープン戦の収穫? まあ収穫はあんま、なかったなあ。最後にちょっとケガ人出たしなあ。29日にスタメンいけるようにな。それを願ってるだけやわ」。

普段は強気一辺倒の人だが、無駄なカラ元気は出さない。OP戦最下位に沈んだ結果を受けて「収穫はあまりなかった」と、ズバリ本音を漏らしたのである。

この日も昨年の日本シリーズで倒したオリックスを相手に島本浩也、石井大智のブルペン陣が打たれての逆転負け。打線も近本光司、大山悠輔を欠いた状況だっただけに得点力ダウンするのは否定できない。オープン戦でよかった…と言うしかない内容だ。

黒星がついた島本がボヤいていたのはこんな話だった。「ボク、去年もそうだったんですよね。最後のオープン戦で打たれて…」。そんなことを言った。

記録部に聞いて確認してみると、彼の記憶は正しい。同じ23年3月24日、丸1年前のオリックス戦(京セラドーム大阪)。島本は5回に2番手で登板したが、打者7人に対して3安打で2失点を喫している。

だがシーズンでは活躍、日本シリーズでもいい働きを見せたのは記憶に新しいところだ。ともに真剣勝負であるがオープン戦とシーズンはやはり違う。吉兆か? とも思うが「去年と同じやからいいと言えるような立場じゃないんで頑張ります」。島本はそう表情を引き締めた。これを戒めに頑張ってほしい。

チームも同じだろう。普通に予想して、今季は楽なシーズンにはならないと思う。監督復帰1年目でのリーグ優勝、そして日本一-。「これは出来過ぎよ」。岡田自身が昨季、そう言っていた。実際に近くで見ていてもそう思わせる場面が次々に起こったのだ。

オープン戦はまさかの結果に? そう聞くと「そんなん全然関係ないわ。何かあんの?」とここだけは強気が戻り、笑いながら返してきた指揮官。それはその通りだろう。すべては3・29からの戦い次第である。これをバネに頑張ってほしい。

ちなみに阪神がオープン戦最下位になるのは18年以来、6年ぶり。そして、その年はシーズンも最下位に沈んでいる。金本知憲のラストイヤーとなった年と言えば思い出すだろう。オープン戦最下位からシーズンで暴れるチームも少なくないが、さあ、どっちだ。ドキドキするのは否定できない。(敬称略)

オリックス対阪神 オリックスに敗れ引き揚げる阪神岡田監督(中央)(撮影・前田充)
オリックス対阪神 オリックスに敗れ引き揚げる阪神岡田監督(中央)(撮影・前田充)
オリックス対阪神 6回表を終え選手交代を告げる阪神岡田監督(撮影・前田充)
オリックス対阪神 6回表を終え選手交代を告げる阪神岡田監督(撮影・前田充)