仙台育英(宮城)は、プロ注目の佐藤世那投手(3年)が9回6安打1失点で完投。先制適時打も放ち、滝川二(兵庫)に勝利した。

 仙台育英の146キロ右腕、エース佐藤世が“脱力投法”で春夏合わせ甲子園3勝目を挙げた。試合直前の練習で球が走らない。「けっこうきつい試合になる」と覚悟した通り、初回、先頭の根来に高めの142キロ直球を左前に運ばれた。だがすぐ頭を切り替える。予想以上にバットに当ててくる相手に直球、フォーク中心に投げ、あえて打たせた。

 フォークを使い三振を取るのが得意で宮城大会決勝で10個、9日の明豊戦でも7個を奪った。だが、この日は6回まで三振はゼロ。「低めのフォークを振ってくれた。三振だと球数が増えるし、打ってもらって楽だった」。121球6安打4奪三振1失点。「思った以上にうまくいった」と、満足の表情で振り返った。

 完投は、春の宮城大会準決勝以来3カ月ぶりだ。昨秋に右肘剥離骨折を発症。夏前にはその痛みをかばい、肩の痛めるなど状態は悪化した。だが、甲子園に入り、痛みと不安は消えた。嫌いなはり治療も、電気治療もせず、受けるのは軽いマッサージのみ。それでも絶好調だった昨秋の「8、9割ぐらい」まで状態は上がってきている。2戦連続2ケタ安打の打線も「頼もしいです」。楽な気持ちでマウンドに上がれている。

 前日13日、昨秋の神宮大会で知り合って以来、親友の敦賀気比・平沼が敗れた。「また対戦したかったので悔しかった」。1-2で敗れた春の雪辱の機会を失ったが、次はその平沼を打ち破った花巻東とぶつかる。「(平沼を)あそこまで打つとは。今日以上に厳しい試合になる」。09年夏の花巻東-東北の3回戦以来6年ぶりに実現する甲子園東北対決。「勝つことだけ考える」と力を込めた。【高場泉穂】