白熱のエース対決を制した。札幌第一の上出拓真投手(2年)が駒大苫小牧打線を3安打に抑え、公式戦初の9回シャットアウト。3回以降は無安打の快投で、1回に長門功一塁手(2年)の適時二塁打で挙げた1点を守った。4年ぶり5度目の決勝進出で、秋は初の全道制覇を狙う。

 覚醒した背番号1に、怖いものはなかった。イニングを重ねるごとに、札幌第一のエース上出の球威は増し、変化球は鋭く落ちた。「攻撃は苦しい場面が続いていたので、守りきるしかないと思っていた」。味方は1回に1点を先制して以降、攻めあぐねていた。1-0の緊迫した投手戦。「エース同士の勝負として負けられない。意地で頑張りました」。最後の打者をスライダーで遊ゴロに打ち取ると、ようやくポーカーフェースを崩した。

 札幌地区予選での不調が、うそのようだ。リードする銭目悠之介捕手(2年)は「試合ごとにどんどん良くなっている。以前は終盤に球威が落ちていたけど、今は上がっていく。びっくりした」と成長ぶりに目を見張る。投手陣で徹底した夏場の走り込みが、実を結んだ。この日、序盤こそピンチを作ったが、3回以降は無安打。8回には自己最速タイの137キロをマークし、終盤勝負に耐えられるようになった。

 家族の夢、甲子園の舞台へ、また1歩、近づいた。OBの父真司さん(54)が同校コーチに復帰して5年目。互いに「(同じチームで)最初はやりにくさがあった」と言うが、今ではグラウンド内でも自宅にいる時でも、野球談議を交わす一番身近な理解者だ。好投手で鳴らした3学年上の兄雄司さん(東洋大2年、札幌光星高出)が最後の夏、南北海道大会準々決勝で敗れた駒大苫小牧に雪辱し「あの試合はスタンドで見ていた。名前負けしないよう意識しました」。負けん気を134球に込め、一昨年覇者で、V奪回を狙った難敵を退けた。

 チームは11年以来、5度目の決勝進出も、優勝はまだない。頂点まで、あと1つ。エースで主将の大黒柱が、その右腕で、歴史の扉をこじ開ける。【中島宙恵】

 ◆札幌第一対北海道栄の道大会対戦成績 3季通じて過去3度で、札幌第一が3連勝中。北海道栄が前身の北海道桜丘時代の90年夏、南北海道大会準決勝で初対戦し、札幌第一が3-1で勝利。同年秋は全道準決勝で激突し、札幌第一が延長12回4-3のサヨナラ勝ち。02年秋の全道準々決勝でも、札幌第一が9-4の逆転で北海道栄を下している。春の全道は対戦なし。今年の決勝は13年ぶりの対決となる。